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鼻  (ねこ4.4匹)

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曽根圭介著。角川ホラー文庫

人間たちは、テングとブタに二分されている。鼻を持つテングはブタに迫害され、殺され続けている。外科医の「私」は、テングたちを救うべく、違法とされるブタへの転換手術を決意する。一方、自己臭症に悩む刑事の「俺」は、2人の少女の行方不明事件を捜査している。そのさなか、因縁の男と再会することになるが……。日本ホラー小説大賞短編賞受賞作「鼻」他二編を収録。大型新人の才気が迸る傑作短篇集。(裏表紙引用)


うおお、これは面白かった!面白すぎると言ってもいい。もっと早くに読んどきゃ良かったよ~。
この方、江戸川乱歩賞も受賞されているのですね。最近そっちに疎いのでびっくりしました。ただ、その乱歩賞の方(『沈底魚』)はあまり評価が高くないようですが(こっちは予約しよう)。それよりも今本屋に並んでる新刊(『あげくの果て』)がめちゃくちゃ面白そう!(こっちは買おう^^)

おっと、本書の話でした。
とりあえず、三作それぞれの感想を簡単に。

『暴落』
人間が株式上場になるというif世界を扱ったもの。包帯で全身ぐるぐる巻きにされ、「イン・タム」君と略して呼ばれるある男の人生の転落を描いたもの。
いやもう、ここであらすじ全部ぶちまけたいくらい面白い内容でした。全く飽きさせず、設定の面白さを展開させながら主人公の行く末を未来から露にして行くというスタイル。100ページ程の中編なのですが、15分くらいで読み終わってしまいましたよ^^;
イン・タム君の本名やその由来、個人の株の上昇や下落による生活レベルの違いなどなど、見所いっぱい!ラストが意外と普通でびっくりしましたが。

『受難』
ある日目が覚めると、ビルとビルの間に手錠で繋がれていた男のお話。
これも最高でした。電波系の少女や心に病を持つ少年、自殺志願のオヤジが登場します。これがまたイライラするのなんの^^;どうして誰も警察を呼んでくれないんだ!男の苦しみ、異星人のような登場人物の恐怖が痛いほど伝わって来ます。ラストはお話の面白さの割に淡白に終わりましたが、悪くはないと思います。

『鼻』
これは感想が難しいなあ。雰囲気は3作共に一貫性があるのですが、こちらはホラーと見せかけたミステリの体を成しています。社会問題も提示されていて、妖怪?を扱ったものでありながら一番人間の恐怖を描き切れていると感じました。好き嫌いはともかく、一番完成度が高いのはこの作品でしょう。
自分が読んで来た受賞作の中では屈指の出来だと思われます。



かの名作「玩具修理者」を越えた、と感じた作品集。愛する「都市伝説セピア」ですらもくすんでしまうくらい気に入ってしまいました。物語の構成力や深みなどはそれらに負けているように思いますが、
面白さや発想力は群を抜いていると感じます。さすがに乙一よりも上だと言う勇気はありませんが、ホラーファンなら必読の期待の新人だと断言したいですね。