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二〇〇二年のスロウ・ボート  (ねこ3.6匹)

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古川日出男著。文春文庫。

この文章は僕自身のエクソダスーー『出トウキョウ記』であり、その失敗の記録だ。(本文より)小学五年生の夏からはじまる三つのボーイ・ミーツ・ガール。トウキョウに突きつけるノオと、愛憎。それは三たびの喪失であり、三たびの敗北だった。言葉でビートをきざむ古川日出男がとどける愛のかたち。著者自身による解題を収録。(裏表紙引用)


わずか150ページ弱の物語なのであっと言う間に読み終わる。村上春樹氏の短編『中国行きのスロウ・ボート』のリミックス版とのこと。なんだかよくワカラナイが、春樹氏をリスペクトし世界観はそのままに著者なりの解釈を加えた作品なのだろう。『中国行きのスロウ・ボート』というジャズ曲があるという情報も入っている。

原作の方は、実は大昔のお金のなかった時代、地元の図書館で立ち読みをした覚えがある。内容はさっぱり覚えていないので再読するべきだったとは思うが。。。まあ、本作は随所に春樹氏らしさがしのばれるものの一つの物語なので意味もわかるし読み手としてそれなりに完結はしたかと思っている。
解釈が正しいかどうかはわからないが、これはある若者の苦悶と救済の物語だという風に読んだ。自分の居場所を見つけられない彼が人生で三人の女性と出会い、熱烈な恋愛の末彼女の方から去ってしまう。その空虚感と東京に閉じ込められた彼の意識がはかない。カフェに氷塊が落下したくだりでは思わずやりすぎだろと突っ込んだが、ラストのさりげない”解放”のシーン、そのインパクトには敵わなかった。