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銀河不動産の超越  (ねこ3.8匹)

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森博嗣著。文藝春秋


“毎日が気怠い”省電力青年・高橋君の人生は銀河不動産に入社して一変した。次々に訪れる変わった
客、ついには運命の女性までが… 。毎日がなんとなく気怠い“省電力”青年・高橋は、惨敗続きの
就職活動の果てに「ここだけはやめておけ」と言われた銀河不動産に入社した。「いろいろ見せて
もらううちに住みたい家が見えてくる」という曖昧な資産家夫人や、「寝ている間に日光浴したい」
というミュージシャン、「スウィングしている部屋に住みたい」という芸術家等々に部屋を斡旋
しているうちに、彼自身がとんでもない家に暮らす羽目に……。無気力青年・高橋はサラリーマン
生活をまっとうできるのか? 極上のユーモア・エンターテインメント!(あらすじ引用)



うおお!これは良かったですね。結構好きかも~(^^にこにこ)
家に森さんの積読本があるのになぜかこの新刊を予約。装丁がモダンで大変好みだったのよ。

はじめはどういうストーリーなのか掴めませんでしたが、森さんにしてはわかりやすい、
骨格のある物語だと判明。胸うち震える感動とか、膝を叩くほどのギャグとかはありませんが、
それぞれのキャラクターが立っている上に主人公の語りがユーモアたっぷり。
これは個人的な森作品のシリーズ外小説に対するイメージなのですが、今までは人間が
「そこにいる気がしない」雰囲気だったのに対し、本作はきちんと人と人の繋がりの温かさや
それぞれのキャラクターの背景、心理などが浮き上がってくる作品です。
かと言って、ベタベタした熱さもなく、それでもやっぱり森さんの世界だなあ、という
スタイリッシュさが健在。

形としては連作短編ですが、ほとんど長編ですね、これは。最後まで読んで仕掛けが見えて来る、
というタイプのものではなく、全ての事柄が時間と共に繋がって進んで行くタイプ。
室内に組み立てられるジェットコースター、どでかいお金型の彫刻、いきなりやって来る
お嫁さんなどなど、夢物語もいいとこですが、その感覚を地で行ってるお洒落さがまた
森さんの才能を見せつけてくれます。