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ΑΩ -超空想科学怪奇譚-  (ねこ4.2匹)

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小林泰三著。角川ホラー文庫


旅客機の墜落事故。乗客全員が死亡と思われた壮絶な事故現場から、諸星隼人は腕一本の状態から
蘇った。一方、真空と磁場と電離体からなる世界で「影」を追い求める生命体”ガ”は、城壁測量士
失い地球へと到来した。”ガ”は隼人と接近遭遇し、冒険を重ねる…。人類が破滅しようとしていた。
新興宗教、「人間もどき」。血肉が世界を覆うーー。日本SF大賞の候補作となった、超SFハード・
アクション。


うぉぉぉ!これ、どうしてSF大賞獲れなかったんでしょうか?凄い完成度だと思うのですが!
小林泰三氏と言えばホラー作家のイメージが強かったのですが、上質のエンターテイメントを
生み出すノンジャンルの作家として名を馳せてもらいたい。個人的には貴志祐介と張る実力を
持った作家だと思っています。ホラー作家でありながら、SFも書くよん、という共通点が
あるからですが、先日読んだ「新世界より」に決してひけをとらない、凌ぐかもしれないと
思いました。「新世界~」と点数が矛盾してますが、こちらは”ハードSF”の要素が強いらしく、
読みやすさや好みで勝負すれば貴志さんがたまたま勝ったというだけかもしれません。


そこはさすがホラー作家、のっけから事故の描写がえげつないです。ただグロいだけではなく、
匂いや現場の人間の表情、言動までもが圧倒的にリアルです。最初は分厚い本だし内容が
合わなそうだと思って読み始めましたが、最初の数ページで心掴まれました。

さらに、いきなりの第一章の異星物体のわけのわからなさが凄まじく面白いです(笑)。
”交接”の習慣やその感覚も面白いのですが、なんといってもそのネーミング。
懲罰で与えられる職種がこれまた^^;電話消毒係とかもあるんですねえ。この世界だと
失業者問題がなさそうだわ^^;

そして、地球。異星からの侵略による人間たちの混乱ぶりがパワフル^^;
特におすすめなのが”人間もどき”です。モロー博士もびっくりの、不気味で衝撃的な描写。
発想は出来ても、これを実際に書いた根性には頭が下がります。作家の空想って宝の山ですねえ。

ラストに向かうにつれてのアクションは着いて行くのに必死でしたが、それでもこの長さで
パワーダウンしない迫力には痺れてしまいました。
これはもう、ほんとに読んで欲しいです。SF、ホラー両方お好きな方にはお薦め!
きっと小林さんのファンになってしまいますよ^^