すべてが猫になる

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第21位 『813』 著/モーリス・ルブラン

2ヶ月半でやっと10冊……(;^^A 許して下さい。。ちょっとペース上げる予定なんで。


さて、そこのミステリ好きの貴方。ならば貴方はルパンがお好きですね?
では、貴方はルパンと言えば『奇巌城』?それとも『813』?
……と言うくらい、ルパンのベスト、と言えばこの2作が挙げられるわけですが、わたくしめは
やはりミステリとしての仕掛けと物語のワクワク感、ルパンの「悪」の魅力が詰まりに詰まった
『813』の方に軍配をあげます。
悲しいことに、個人的には少し不満のある新潮文庫堀口大學氏訳でしか読めないのが
残念なのですが。ルパンはやっぱり「リュパン」であって欲しいし、ルパンの一人称が「わし」
というのは^^;ちょいとイメージを掴むには選択が杜撰な感じも。。


ああ、ルパン。。スマートでレディーファーストで、自信家な大泥棒。
怪盗紳士、という呼び名は実に的確で、彼は人殺しを一切行わず、貧乏人の家は狙いません。
いつでも、富豪の重大な秘密やその財産、秘宝とターゲットは一貫しています。自分の
スタイルに合わない盗みはしない。常に偽名を使い警察を翻弄し、裏の罠を仕掛け
部下を使い、国内一の悪党ながらも一般市民の羨望を受けます。

この『813』では、ダイヤモンド王であるケッセルバック氏の重大秘密を明らかにすべく
ルパンが豪邸へ乗り出します。見事彼の大事な秘宝を手に入れたルパンですが、なんと
その夜ケッセルバック氏が何者かに刺殺されてしまいます。
「ルパンが人を殺した!」国中は騒然としますが、ただ一人、「ルパンは殺人をしない、
これは違う人物が犯人だ」と断言する人物が。。。



ルパンが人殺し!?というだけで、ファンには衝撃すぎる展開ですね。
さらに、ある人物に扮したルパンが密会する事になる人物との再会も見もの。(これは「奇巌城」を
先に読まれていた方が良いかも。それの4年後のお話だそうです)
ルパンのセンチな人柄は健在ながら、今までよりも「悪」の要素が高まって来ているのが
さらにルパンの魅力に拍車をかけます。人殺しはしないとわかっていつつも、それでも
かなり悪どいギリギリのところまで手を出して読者と警察を手玉に取るのです。

さらに、本作の見所はラストに凝縮されています。
ルパンのことなら何でも知っているわ♪と上から目線で読んでいる読者の目がひんむくほどの、
当時のおぼこかった自分には受け入れられないほどのミステリ的な高度な仕掛け。(当時に
しては、ですが)ある意味、「な~~~~んだ^^;」と自分が恥ずかしくなったりするのが
また面白さの一つ。


しかしこの作品、本書だけでは完結しておりません^^;
この後に、『続・813』という本が出ており、一応本書だけでもお腹一杯にはなるのですが
肝心な謎が全く解明されていないので、続けて読まれる事をお薦めします。
今読んでも間違いなく面白い、スリル満載、恋愛少々、サプライズてんこもりの本書。
翻訳ものにしては読みやすい方だと思うので、みなさん久々にルパンで盛り上がってみませんか^^。