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第24位 『わらの女』 著/カトリーヌ・アルレー

3月中に終了すると予告しましたが、全然進みませんね^^;あいすみません。第24位は海外作品。
『僧正~』に続いての2冊目の古典です。
カトリーヌ・アルレーは20代前半にどはまりしてしまった作家。本作は著者の二作目の作品に
あたり、一躍有名作家への階段を登り始めた記念すべき作品。フランスの女流作家ですが、その
経歴はあまり明らかになっていない模様。悪女ものをメインとした「完全犯罪」小説を得意と
しており、本作もドラマ化されるなどその作品の質の高さが証明され、国際的に愛された
作品としての地位を確立しています。
創元推理文庫より20数冊刊行されておりますが、すべて現在入手出来るかは不明。


さて、悪女ものの代表格と言われているこの作品ですが。
自分の見解ですが、主人公であるヒルデガルデがアルレー作品の中でトップクラスの悪女だとは
思えません。「悪女」と言うならば『目には目を』や『二百万ドルと鰯一匹』の方が
それにふさわしいと思います。自分で手を下せる行為、その線引きはどこなのか。
その観点で読むと、ヒルデガルデは本物の悪女ではなかった気がするのです。
ハンブルグの大爆撃で両親、家、全てを失ったヒルデガルデ。34歳となりながら
独身の彼女のルックスは美しく、聡明で計算高い。何もない彼女はある日、大富豪の新聞広告を
見つけ応募する。それは富豪の結婚相手を募集するものだった。うまくカンヌへ招待された
ヒルデガルデだが、彼女を待っていたのは恐ろしい罠と巧妙な完全犯罪だった。

あまりネタは割りたくないので本書の内容はここまでとしますが、アルレー作品の特徴は
勧善懲悪でないまま完成されてしまう特殊で衝撃的な世界です。出て来るのは悪人ばかり。
一種の頭脳ゲームであり、駆け引きとスリルが詰まったサスペンス劇。
とにかくアルレー作品は面白い。文章は流麗で会話センスが良く、登場人物が少ない為
(本作では主要人物は4人^^;)物語も明快。次々展開の変わるその意外性と
胸躍るクライマックス。お洒落で格好良いタイトルが並ぶアルレーのピンクの背表紙は
まだ若かった自分の一番の憧れでした。


面白さ、で言えば本書が一番だと思います。
個人的には、上で挙げた二作や、アルレー作品としては異色の『白墨の男』、後期の傑作
『アラーム!』がお気に入りです。良かったら1冊いかがでしょうか^^
欲望と復讐と裏切りと絶望。世界の他のどんな作家の作品にも登場し、アルレー世界に出て来ない
一つの言葉。探してみるのも一興です^^