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白い兎が逃げる  (ねこ3匹)

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有栖川有栖著。光文社文庫


ストーカー行為に悩む劇団の看板女優・清水伶奈。彼女を変質者から引き離す計画は成功したはず
だった。ところが、ストーカーが兎小屋の裏で死体となって発見される。追いかけていたはずの
彼がーー。鉄道に絡むトリックを用いた表題作ほか、火村とアリスが挑む3つの事件。(裏表紙引用)




比較的多めだった有栖川さんの積読本、この作品を持って消え去りました。ぱちぱち^^
好きだからこそ集めてしまうのに、たくさんあると価値薄く感じられて手をつけにくかったんで
しょうかね^^;あと文庫では「まほろ市~」と「山伏なんとか」だけ持ってませんが、まあ
いつの日かごきげんよう^^;

では、光文社文庫初の文庫、本書『白い兎が逃げる』の感想を一つずつへぼへぼに。


『不在の証明』
双子の兄弟のうち、一人が恋人の部屋で殺されていた、というお話です。
容疑者が少ないミステリーで意外性を出そうと思ったら、色々と作家は頭を悩ませなければ
いけないものですね。二転三転する謎解きはなかなかでした。
最初に犯罪者が語り手で出て来たのが異色で面白い。


『地下室の処刑』
捜査一課の森下という刑事が巻き込まれた監禁事件。彼自身が「シャングリラ十字軍」の
(「暗い宿」にも出て来ましたね^^)メンバーの制裁現場に監禁されてしまいます。
有栖川さんもベテラン作家らしく、色々なテーマの作品に挑戦されているようです。
テロリストや宗教団体の”正論”の胡散臭さを物語でうまく表現出来ていると思いますね。
「世間の目」では、と補足が必要でしょうか。入団した事ないので^^;


『比類のない神々しいような瞬間』
エラリー・クイーンの「Xの悲劇」についての見解が有栖川さん(作家の)と自分と
一緒だったので感激しました^^;(ミーハー)おいらもあんま好きじゃないんだぁ。
タイトルは引用されたもの。
ダイイング・メッセージについての有栖川さんの独自の見解と挑戦が伺い知れて好感が持てます。


『白い兎が逃げる』
先日読んだ『海のある奈良に~』に比べると格段に読みやすくとっつきやすいのでは
ないでしょうか^^;トラベル・ミステリーです。
テーマがストーカーという事で、お互い他人事ではありませんからね。
トラベルものは「アリバイ崩し」がメインとなるので犯人は比較的容易に知れてしまいます。
被害者(?)たちがストーカーに仕掛ける罠などは面白いのですが、少し危機感を持って
行動した方がいいですね。何事も。しかし、警察が頼りにならないとなれば。。。
作品全体としては、アリスが喩える「兎」がなかなか詩的な表現を随所に盛り込んでいて
別の読み方をすれば良い作品ではないか、と思います。




以上。
全体的にそれほど面白いという作品がなかったのですが(笑)。
せっかく火村さんが出てるのに、決め台詞で痺れるものがなかったんですよね。
謎解き一辺倒のものは物足りないな。