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リピート  (ねこ3.5匹)

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乾くるみ著。文春文庫。


もし、現在の記憶を持ったまま十ヶ月前の自分に戻れるとしたら?この夢のような「リピート」に
誘われ、疑いつつも人生のやり直しに臨んだ十人の男女。ところが彼らは一人、また一人と不審な
死を遂げて……。(裏表紙引用)




期待しすぎたのが悪かったとは思わない。『イニシエーション・ラブ』の衝撃をもう一度、とか
『ノンストップの面白さ』とか言う売り文句に「おいおい」と突っ込んだのは読んだ後に出て来た
感情。読んでいる際の邪魔にはならなかったはず。


十人が得体の知れないリピート男・風間に説得&説明を受けて実際に過去へ出発する決意を
固めるまで。


長いねん!!!!!!あらすじを読めばそこからが本筋なのだから、ページ使ってないで
とっとと現場へ行ってくれ!!
もちろん、タイムトラベルもののミステリには必然的な「この世界独自のルール」は
書いてもらわなくては困るし、異常な展開に対して普通の常識を持った一般人十人が
違和感なくそのリピート現象に納得し、信用させるに足るエピソードを挟む事は必要だろう。
しかし、約200ページに及ぶ「段取り」にはさすがにテンション下がる。。。

読む手が止まらない面白さ、という点では問題作『Jの神話』の方が圧倒的に上だったし、
ラストの衝撃、という意味でも『イニシエーション~』とは比べものにならなかった。
そもそも、こちらは2回読まなくてもわかる内容だし、普通のSFミステリだと思う。。。
本作を読んで、ほとんどのミステリ読者はあの西澤保彦の傑作『七回死んだ男』を
連想されると思うので、その時点でもう設定から不利な予感すらする。
加えて、主人公の青年の自分勝手で思いやりのない性格はどう転んでも自分が一番嫌いな
タイプだし、相手役として登場する紅一点の篠崎さんとのやり取りがどうしても気持ち悪い。
いちいち恋愛を絡めて来るのは乾さんの作風なので仕方ないとしても、
こういう型に嵌まった女性って一番嫌いなんだよねえ。。。
君にとっての恋愛は結婚しかないのかみたいな。


まあ不満はそこまでとして、面白くないかと言うとそういうわけでは決してなかった。
今回は複雑なルールとパラレルワールドの問題があるため、大きなサプライズは
得られないものの、ミステリとして、だからこそ無理のない真相に辿り着ける。

個人的には、こういうラストにするならば彼を好感の持てるキャラに作り上げていた方が
かえって面白かった気はするのだけど。
いくら嫌いなタイプでも、おいらそこまで鬼じゃないからね。