すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

れんげ野原のまんなかで  (ねこ3.6匹)

イメージ 1

森谷明子著。東京創元社ミステリ・フロンティア


秋庭市のはずれもはずれ、ススキばかりがおいしげる斜面のど真ん中に立つ秋庭市立秋葉図書館、
そこが文子の仕事場だ。無類の本好きである先輩司書の能瀬や日野らと、日がな一日あくびをしながら
お客さんの少ない図書館で働いている。ところがある日を境に、職員の目を盗んで閉館後の図書館に
居残ろうとする少年たちが次々現れた。いったい何を狙っているのか?(第一話ーー花博、光る。)
のどかな図書館を優しく彩る、季節の移り変わりとささやかな謎。(あらすじ引用)



全五話収録の連作短編集なんですけど、これ、ほんとに、第一話が凄く良かったんですよ。
謎そのものがささやかだけれどミステリアスだし、人情味に溢れていて優しさがあって、
それでいて本好きのハートに響く司書さんの言葉。どれをとっても素敵な作品でした。

その流れで第二話以降も読めたので、それなりに作品集としてよろしかったのですが、
ゆきあやの好みでありながら(雰囲気とか題材とか好みにメガヒットだもの)、
最後にほうっと満足するには何かが足りなかった印象。
地味だとか謎が小粒だとか言う以前に、文章そのものにいい意味で引っ掛かるものがなかった事と、
(巧い下手じゃなく、何かキラリと光るもの)文子というキャラクターにあまり入り込めなかったのが
まずかった。これが男性キャラなら「出て来て当然のワトスン君」として流せるものを、
女性キャラだとえてしてこうなる「優しいいい子」に反発を感じてしまう自分の性質がうらめしい。


書店員さんだから別物かもしれないけれど、同じミステリ・フロンティアという事で自分は
「配達あかずきん」の方がインパクトは強かったな。
この作品が、もっと活気のある図書館を舞台にしていたら何か変わったかもしれないけど。