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カンニング少女  (ねこ3.8匹)

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黒田研二著。文藝春秋

都立K高校3年4組、天童玲美。入試を4ヶ月後に控えた10月、彼女はなんとしてでも最難関
私大・馳田学院に合格しなくてはならなくなった。不慮の事故で亡くなった姉、芙美子の死の
真相を探るためだ。玲美が頼ったのは、クラスメイトで成績トップの超優等生、愛香。そこに
陸上インターハイ選手の杜夫と、機械オタクの隼人を加えた3人が、彼女の参謀となった。決して
成績はよくない玲美。彼らが出した結論は、カンニングによる入試突破だった。ひとりの少女が、
前代未聞の闘いに挑もうとしていた。教師に、学校に、そして心の中の何かに、いま玲美は
宣戦布告するーー。(あらすじ引用)



応援団を標榜しているからと言って全部読んでいるわけではないのだ。文句あるかぃ。
でもこれでたぶん読破だから許して。


おほん。
これ、あんまり面白くないんじゃないかと思っていた。悪い評判は少なかったものの、
「結婚なんてしたくない」よりは面白いけど「クレイジー・クレーマー」程ではないよ、と
そんな雰囲気を感じ取っていたのだ。(あれ?前も同じ事をどこかで?^^;)
実際その通りだったが(笑)、

ストーリー自体は私が想像していたものと合致したが、(だってあらすじ通りなんだもん)
カンニングという不正行為をフィクションの世界と割り切れるタイプかどうか、
(又はカンニング自体それほど後ろめたさを感じないタイプか、)
読者の性格によって物語の受け止め方、入り方が変わって来る物語かと想像していた。
当の私は、人生で様々な悪事を働いて来た中でもカンニングだけはした事がないのだが、
そのくせ強盗や誘拐犯が生き生きと動き回っていたり、ユーモラスなヤ○ザであったりする
小説は好みでないと来るからちょっと厄介だ。ここぞとばかりに「カンニングだとー!」と
物語のテーマそっちのけでぶつぶつ文句を垂れる可能性もなくはなかった。


関係なかった(笑)。。

恋愛と友情と、次々飛び出すユニークな「理系オタクが発明する現代のカンニング・グッズ」。
頭の堅い大人と、これから大人の第一歩を踏み出す彼らとの地味で壮絶なバトル。
たのし~い!!^^
出て来る教師達が演出過剰なほどに型に嵌った「わかってない大人」なので
余計すっきりする。リアリティはないけれど、これぐらい極端じゃないと張り合いないんじゃ
ないかしら。そもそも、最後にちょっとした恋愛が織り込まれていたり、感動のラストシーンと
して友情を高めるエピソードがあったりするけれど感動出来なかったのは(笑)、
人物造形というよりも(こっちは描き分けという意味でも良かったと思う)「なぜ彼らは
少女に協力するのか」「なぜ仲の悪かった姉にそこまで執着するのか」という動機に説得力が
足りなかったからじゃないか。
ある教師が真実を知り、心の置き方までも変わってしまうクライマックスも安易に感じる。
人間はある年齢を過ぎればそう簡単に変わったりはしない。変わるとすれば、随分と遅い。
少なくとも、このエピソードの場合はそうだろう。

この作品の対象が大人ではないのならば、こんなものかとも思うが。


あれ?

いやいや、面白かったんで誤解なきよう^^;
一気読みでした。はい。
好感度という意味ではくろけん作品の中ではかなり高く、お薦めもしやすい。



余談。
「規則を守り教師の言う事を聞いて飼い犬みたいになっている男と、規則を破ってばかりの男。
どちらが魅力的で、どちらに将来性を感じるかは言うまでもないでしょう」という
台詞があった。

椿井君じゃなかった場合、
おいらどちらにも魅力を感じないし、後者に将来性は感じないんだけど……^^;;

どうなんでしょ。。なんか極端な事ばっかり描いてる小説だったですね。。