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乱れからくり (ねこ4.7匹)

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泡坂妻夫著。創元推理文庫

玩具会社の部長馬割朋浩は降ってきた隕石に当たり命を落としてしまう。その葬儀も終わらぬうちに
彼の幼児が誤って睡眠薬を飲んで死亡する。さらに死に神に魅入られたように馬割家の人々に
連続する不可解な死。一族の秘められた謎とねじ屋敷と呼ばれる同家の庭に造られた巨大迷路に
隠された秘密を巡って、男まさりの女流探偵と新米助手の捜査が始まる。日本推理作家協会賞受賞作。
(裏表紙引用)


『ルールバトン』でお薦めいただいた本、今回ははしたなき三十路の貴公子たいりょうさんです。
お薦めと共に添えられたたいりょうさんのこの言葉。「古典すぎて、敬遠してるのか」。。
はい、その通りでした^^;
いやあ、あのねえ。前々から思ってたんですが、どうも自分は「自分で本を選ぶセンス」が
欠落しているんじゃないかと。。本を読んで感じた事や少しばかりの評価そのものは
当然と思いますが自分を一番信頼しています。が。ここんとこ数年、お薦めされなければ
自主的に読む事は絶対なかったな、という本に当たりが続出しているので、これからも
どんどん人様をたよりに読書生活を送って行く事を平成19年5月、ここに誓います。

能書きおわり。本編の感想を。
※以下、堂々とネタバレします。未読の方は絶対に読まないで下さいね。













設定が昭和52年。おいらがまだ、ほっぺたぱんぱんの饅頭顔でぼてぼてと歩いていた頃の
お話。おかん曰く「あんた女の子やのにこんな丸顔でかわいそうやーと思ってたら……まさか
こんなんなるとは思わんかったわーいやーあの頃は焦ったあはははは。」と……いやいや
そんな事はどうでもいい。 まあ、これがなんと古くさくなく、むしろ新鮮な雰囲気があって
良い。時代がちょっとズレるが、正史や乱歩とはまた違った魅力。そして一番驚いたのが
この読みやすさ!ええっ、さくさく読めるぞ!?しかも、いきなり登場する個性的な
女流探偵と、ボクサーくずれ?の敏夫君がコンビを組むまでの経緯がまるでコメディのごとく
面白い。

そしてそして、事件がーーーーーーー!!
依頼人の後を車で付けていた探偵(舞子)と敏夫の目の前で、な、なななんとその依頼人(朋浩)が
『隕石に当たって死亡する』んですよー!!なんだこれはーー!「隕石じゃなくてなんらかの
トリックが」と思うのがミステリ読みとしては当然だと思うんですが、いやいや、本当に隕石が
当たって死んじゃったのよ!
なんか、古典の方が(天藤さんとか)今読んでもびっくりするようなネタが仕掛けられている
というか、ネタそのものにパワーがありますね。リアリティとか、そんな事を言わせる余地が
ないというか。
そして、この犯人の意外性!。
「実は最初に死んだと思っていた人間が生きていました」じゃなくて、本当に死んでるんだもん。
自動殺人装置、っていうのも初めてじゃない気がするけれど、連続だもんね。びっくりびっくり。
トリックにつぐトリックの応酬に感動すらおぼえるのだけど、殺人に至るまでの人格形成の深みと、
その執念。人間の悪意が恐ろしい。そして悲しい。


ふう。ちょっと書くの疲れた^^;ぜえぜえ。
ラストシーンも含めて、最後まで完璧な作品でございました。
怒濤の「名探偵の独壇場」がなんだか懐かしくて興奮してしまったし、満足です。
また読破したい作家さんが増えちゃったよー。

たいりょうさん、素晴らしい作品のご紹介ありがとでした。