すべてが猫になる

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ターン (ねこ4.5匹)

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北村薫著。新潮文庫

真希は29歳の版画家。夏の午後、ダンプと衝突する。気がつくと、自宅の座椅子でまどろみから
目覚める自分がいた。3時15分。いつも通りの家、いつも通りの外。が、この世界には真希一人の
ほか誰もいなかった。そしてどんな一日を過ごしても、定刻がくると一日前の座椅子に戻ってしまう。
ターン。いつかは帰れるの?それともこのまま……だが、150日を過ぎた午後、突然、電話が
鳴った。(裏表紙引用)


一日の同じ時間に繰り返し戻ってしまう。どこかで読んだような現象だな。。。
唯一繋がる電話は事故で生死をさまよう娘を心配する母親でなく、面識のない謎の男性。
これもまたわかりやすいな。なぜあなたの声だけが聞こえるの?だとよ^^;
これはもう、恋愛小説の定石っちゅーかワンパターンっちゅーかわかりやすいっちゅーか。。
今回は恋愛か。やばいぞゆきあや。感動的であればあるほどきっと引くぞ。
ムヒでも用意しておくか。。


と、内心半笑いでしたがそれでもそこそこ楽しく読み進めておりました。
いきなりの二人称が良いですね。先日よもさんと登場人物の数について盛り上がった矢先なんで。
そうそう、こういうのが好きなんだあ~。
ここは好みの分かれ目かもしれませんが、この人の描く人魚姫やロビンソン・クルーソーなどの
モチーフや、文学的な比喩が大好きです。普通、こんな目に遭ったら
「わたしだけが回っている。がらんとした誰もいない競技場のトラックを」とか
「ねえ、心がこんなにも切なく『待って』と頼んでいるのに、体はどうして、耳もかさずに
足早に行ってしまうのかしら」とか言ってられないんじゃ。。余裕だなおい^^;;

それはさておき、自分的につぼだったのはラストの展開。
追われる恐怖、ってハラハラするので好き。このベタに都合のいい出来事も好きさ。
「スキップ」のエンディングがああいう形だったので、今回もそうかな?と最初は思って
いたんですが、設定的にそれはないなあ、と予測を立てて読んでいました。さすがにこれは
残れないだろう、と思って。で、もし残るのなら、せっかくヒーロー役もいることだし
こういう展開はどうだろう?意外だぞ。とか勝手に物語を作ってみたりして。
今度は「スキップ」と逆で、「いかにして戻るか!」その事ばかり考えていたもんで^^;、
作者の狙い通りのシーンで見事ゆきあやのハートは撃ち抜かれてしまいました。
くうっ、不意打ちとは卑怯なり。。


文学でも映画でも漫画でも歌詞でも、古くから使い回しされているメッセージなんだけど。
別に今さら32歳の自分が「そうだ!今の一瞬一瞬が生きてるんだ!」とか、
そのテーマに「感動しました!」って事でなくて。
人間が動いている物語が好きなんですねおいら。
小説を読む場合、
主人公を自分に当て嵌めて喜ぶ作業よりも、関係のない所から盛り上がってる方が
向いているんです。高評価でごめんなさい。