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迷路館の殺人 (ねこ4.5匹)

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綾辻行人著。講談社文庫。


奇妙奇天烈な地下の館、迷路館。招かれた四人の作家たちは莫大な“賞金”をかけて、この館を舞台にした推理小説の競作を始めるが、それは恐るべき連続殺人劇の開幕でもあった。周到な企みと徹底的な遊び心でミステリファンを驚喜させたシリーズ第三作、待望の新装改訂版。初期「新本格」を象徴する傑作。(裏表紙引用)


(16.11.13書き直し)

館シリーズ第3弾。

今までとは少し趣向を変えて、<作中作>という形を取った作品となっている。この「迷路館の殺人」は実際に起きた事件を、登場人物の名前を変えて再現したものだとされていて、冒頭に「あとがき」があるのが特徴だ。さらに作中では語り手である島田潔が誰だか分からないようになっているという、読者への挑戦とも取れる遊び心がある。前2作のように、時間が交互に行きつ戻りつすることもない。

そしてこの館の大きな特徴は、館シリーズ初の「地下」に存在しているところだろう。閉塞感は本格ミステリにとって重要だが、この特徴がその要素を大きく引き立てていると言っても過言ではない。

本書は単なる犯人当てやトリックに特化したものではなく、様々な引っ掛けで読者を翻弄してくれる。1度判明したかに見えた真相はもとより、作中作であることを大いに生かした試みはその全てが計算されつくしたものだ。個人的に推理出来ていたダイイング・メッセージや出血の正体などは瑣末な問題だろう。私が思う館シリーズ傑作群の一つだ。