すべてが猫になる

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陰摩羅鬼の瑕 (ねこ3.9匹)

京極夏彦著。講談社文庫。

白樺湖にある謎の洋館『鳥の城』では伯爵の五度目の祝儀が開かれようとしていた。新婦の
ボディーガードとして雇われた榎木津は盲目となっており、関口巽が同行した。怪しげな
一族と不気味な鳥の剥製に囲まれ関口の精神はダメージを受けたが、「視えてしまう」当の榎木津が
館の住人達に放った言葉はショッキングなものだった。そこに人殺しがいる!ーーーー


初の分冊ですよ。今までは通常版で読んでいたため、読了するまでの何と遠い道程だったことか。
おかげさまでわずか2日でめでたく読了いたしました。
京極フリークの方々にすれば分冊版は邪道かもしれませんが、(実は自分も意地でそう思っていた)
読んでみれば私にはこっちのスタイルが合うかもしれません。単に重量、という意味だけでなく
なんだかワクワクしたんですよね、ずっと。全部分冊で再読したいと思いましたよ。

本書はシリーズの既出本に比べ知名度が薄い印象があります。実際フリークでない自分は
買う直前まで存在を知らなかったですから。で、読んでみて感じた事は色々ありますが、
新しくシリーズを読むたびに京極世界の新発見、理解を積み上げて来た歴史(大げさな)を
振り返ると、本書は今までの京極世界をおさらい、或いはなぞったものであり、さらに物語の
インパクトや真相の瞠目すべき発想においては控えめと言わざるを得ないーー。そういう
印象を持ちました。そもそも、プロローグが今までと「謎、仕掛け」という意味では
明らかに変化がありますよね。(変化というより動きがない?)

となると後は好みの問題となるわけですが、自分はやっぱり本書も好きな1冊になるわけで。
蘊蓄が少ない分読みやすかった(つまり京極堂の活躍が押さえ気味。。)のですが、
元々自分は京極氏の「おどろ~おどろ~」した雰囲気を一番に好んでいるわけではないので、
「ザ・本格ミステリ」に少し怪奇を加えたこういう味わいのものでも十分楽しいのです。

何と行っても関口君がやばやばの語り手ですし、榎木津さんの第一声が最高。
「君達も寝賜えッ」
え、榎さん。。。また語録に入るよコレ。。