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水車館の殺人 (ねこ4.2匹)

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綾辻行人著。講談社文庫。


仮面の当主と孤独な美少女が住まう異形の館、水車館。一年前の嵐の夜を悪夢に変えた不可解な惨劇が、今年も繰り返されるのか?密室から消失した男の謎、そして幻想画家・藤沼一成の遺作「幻影群像」を巡る恐るべき秘密とは…!?本格ミステリ復権を高らかに謳った「館」シリーズ第二弾、全面改訂の決定版。(裏表紙引用)


(16.10.11再読)

館シリーズ第2弾は、「水車」を動力源とした館が舞台。この館も「十角館」と同じく中村青司が設計した。その館で1年前に起きた殺人と窃盗、その犯人と目される人物の行方不明事件が未解決のままとなっている。その謎に興味を持った島田潔は、無礼を承知で招待を受けていない水車館へ乗り込むが――。

なんだか島田潔のキャラが変わってしまっている気がする^^;まあそれはいいとして、館ものファンにはよだれもののキャラクターがずらり揃って、十角館に並ぶ王道の本格ミステリになっている。火傷を隠すために仮面をつけ車椅子に乗った主人、親娘ほどの年の差のある妻、謹厳実直で無口な執事。ほとんど人物の入れ替わりがないまま、物語は1年前と現在を行き来する。そして同じように事件が起こるという流れ。塔から落下する家政婦や焼却炉から見つかるバラバラ死体など、緊迫感と雰囲気だけで圧倒した作品と言えよう。

トリックはシンプルながらも人の盲点をついたもので意外性があった。目に見えるそのままが真実ではないということか。哀愁残るラストもこのシリーズの特色を方向づける役割があると思う。惜しむらくは、水車が水車である必然性がなかったことか。