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狂骨の夢  (ねこ4.5匹)

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京極夏彦著。講談社文庫。

夫を四度殺した女、朱美。極度の強迫観念に脅える元精神科医、降旗。神を信じ得ぬ牧師、白丘。夢と現実の縺れに悩む三人の前に怪事件が続発する。海に漂う金色の髑髏、山中での集団自決。遊民・伊佐間、文士・関口、刑事・木場らも見守るなか、京極堂は憑物を落とせるのか?著者会心のシリーズ第三弾。(裏表紙引用)
21.8.21再読書き直し。
 
かなり好きだった作品なので気合いを入れて再読したが、こんなに登場人物が入り組んだ複雑な作品だったとは…。兵役忌避者の元夫の首を絞めて切断するも何度も元夫が帰ってくると怯える女、朱美。彼女には覚えのない別人の記憶があり、混乱していた。旅荘いさま屋の釣り堀管理人伊佐間は朱美と逗子で出逢い、朱美の告白を聞かされる。基督教会の雑役夫は元精神科医で、幼児の頃から淫猥な髑髏の夢に苦しめられている。彼らを取り巻く人びとと、逗子湾に浮かぶ金色髑髏事件、二子山の集団自殺事件などなど複数の奇怪な事件が錯綜し何が何やらわからない。前作では様々な出来事を切り離し解決したが、今回は逆に全ての出来事は繋がっていると京極堂は言う。牧師の見た神主らの髑髏や朱美の現夫の殺害事件というのも加わる。相変わらず木場刑事はキレているし、えのさんは場を引っ掻き回すし(でも役に立つ)、関口君は鬱々しているしで京極堂の憑き物落としもシリーズ最大数の関係者を一堂に会して盛り上がる。
 
盛り上がることは盛り上がるが、フロイトユングのあれこれよりも歴史を踏まえた神話の薀蓄話に結構脳をやられた。。今回は脱線ではなく、関係者の性質なんかにも関わってくるものだから。結構な大風呂敷を広げるも、結局は人としてのあり方というところに落ち着きホっとする。今作が映像化されなかったのは、まあ内容が内容だからというのもあるかも。エロいからね。。朱美のややこしい4度の殺人やいなくなった容疑者の民江の関係や真実が明らかになると、全ての奇々怪々な出来事が突然リアルになる。
戻ってきた夫の言動やら肉付けされていく髑髏の謎なども、分かってしまえば全て繋がる。スッキリ。前2作に比べちょっと難解で地味だが、ストーリーや雰囲気がやはり好き。特にラストシーンは何度読んでもいい。