すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

魍魎の匣  (ねこ4.8匹)

イメージ 1 

匣の中には綺麗な娘がぴったり入ってゐた。箱を祀る奇妙な霊能者。箱詰めにされた少女達の四肢。そして巨大な箱型の建物―箱を巡る虚妄が美少女転落事件とバラバラ殺人を結ぶ。探偵・榎木津、文士・関口、刑事・木場らがみな事件に関わり京極堂の元へ。果たして憑物は落とせるのか!?日本推理作家協会賞に輝いた超絶ミステリ、妖怪シリーズ第2弾。(紹介文引用)
京極夏彦著。講談社文庫。
21.8.16再読書き直し。
 
最高傑作との呼び声高い、百鬼夜行シリーズ第2弾。
 
4件の連続バラバラ事件に京極堂が挑む。1050ページ強の大作だけに、なかなか感想がまとめにくいが…。木場刑事の悲恋物語であり、関口君の単行本発行記念作でもあり、狂気に取り憑かれた研究者と不幸な運命に身をやつした女性の物語であり、悲しい出自のもと哀れな末路を辿った2人の少女の物語でもあり。
 
木場刑事の視点にかなりページ数が割かれているので、前作よりは読みやすい。京極堂一味は普通の作品ならもう終わっている頃にようよう登場するのでやっとかー!という感じではあるが、出たら出たでウンチクの応酬、占い師と霊能者と手品師と宗教者の違いなど色々興味深い。美貌の女優・陽子の人生を紐解く作品でもあるが、それぞれの登場人物の精神状態がまともではないあたり、「魍魎」とは何かを考えさせられる。映画が言うところの「暗黒面に堕ちる」と同義だろうと解釈したがどうだろうか。
 
とにかくラストの謎解きと憑き物落としのシーンがショッキングかつ映像的すぎて読む手が止まらなかった。不気味かつグロテスクでありながら、どこか耽美で読むこちらもあちら側に行ってしまいそうな気になる。初読時は気持ち悪さが勝ったが、今の自分の方が想像力や共感力がついているということか。前作のほうがロジカルさでは上だが、ドラマ性では圧倒的。これまた前作と同じで、うまく感想が書けないんだよなあ。これだけの文章力と完璧な世界観はとにかく読めとしか言いようがない。