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世界の終わり、あるいは始まり (ねこ4.2匹)

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歌野晶午著。角川文庫。

東京近郊で連続する誘拐殺人事件。誘拐された子供はみな、身代金の受け渡しの前に銃で殺害
されており、その残虐な手口で世間を騒がせていた。そんな中、富樫修は小学六年生の息子・
雄介の部屋から被害者の父親の名刺を発見してしまう。息子が誘拐事件に関わりを持っているのでは
ないか?恐るべき疑惑はやがて確信へと変わり……。既存のミステリの枠を超越した、崩壊と
再生を描く衝撃の問題作。(裏表紙引用)


※記事内容が小説の具体的な内容に触れまくっています。未読の方は絶対に以下読まないで下さい。



















なんじゃーーーーーーーーーーーこりゃーーーーーーーーーー(^^;)。

ということで、ネタバレなしには何も語れないこの衝撃作。
手が込んでる?いやいや、叙述?いやいやいや、これは全く自分に新しいびっくり本。
歌野さん作品でも初の試みであるのに、どう考えてもこれは歌野さんの作品だと実感する。
始めは自分の息子が誘拐殺人犯であるかどうか、そしてそれによる父親の葛藤、という
社会派サスペンスなのかと思ってゆるりゆるり読んでいた。
人間の醜さや真の姿、自己愛、格好をつけ倫理観を語るなどというオブラートに包まずに
かなりあけすけに、むしろ「自分はここまでじゃないよ」と八割方の読者に印象を持たせるくらい
(実際本性はそうではないかもしれない)ギリギリの心理を描いている。
でも性悪説テーマって別に珍しくないからね。
そこが読んでいてだるいかだるくないかが肝だなあ、と考えつつ第一部を読んでいた私。

おっと。
なんだこれ。
父親の妄想、行動のシミュレーション?が延々と繰り返される。最初は度肝を抜かれたが、
「今度こそ本当だろう」「次こそ実行した事だろう」と若干半笑いで読み続ける事になった。
でも。
ぎゃーー。終わったーーーー^^;。。

なるほど。
ミステリだけどほとんどその体裁はなくなってしまっているし、何を伝えたかったのか、という
小説内容から受けるものも希薄だと思う。
かと言って、では文学としてどうか?と思うと考えるまでもない(ごめんよ)。
しかし、歌野さんはまだまだチャレンジしているし、ミステリの前を見ている。
ミステリとしても文学としても絶賛できないが、この発想と試みに私はかなり好感を持った。
面白かったよ歌野さん。
もしかして私、これが歌野さんの作品でNo.1かも。