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風の海 迷宮の岸 (ねこ4.8匹)

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小野不由美著。講談社文庫。

幼(いとけな)き麒麟に迫り来る決断の時──神獣である麒麟が王を選び玉座に据える十二国。その一つ戴国(たいこく)麒麟の泰麒(たいき)は、天地を揺るがす〈蝕(しょく)〉で蓬莱(ほうらい)に流され、人の子として育った。十年の時を経て故国(くに)へと戻されるも、役割を理解できぬ麒麟の葛藤が始まる。我こそはと名乗りを挙げる者たちを前に、この国の命運を担うべき「王」を選ぶことはできるのだろうか。(裏表紙引用)
 
19.10.30再読書き直し。
 
13年ぶりに再読して、十二国記の設定の緻密さと魅力に驚く。泰果から生まれる麒麟麒麟の親代わりとなる女怪、王を選ぶしきたり、武器を使えない麒麟の傍に仕える使令。「魔性の子」とも綺麗に繋がった。蓬莱まで飛ばされた麒麟が10年ぶりに見つかってからの物語。泰麒と呼ばれ新たに泰国で暮らすことになった少年が、戸惑いながらも自身の出自や運命、生活環境にじっくりと慣れていく様が描かれる。この泰麒の純粋でお上品なこと!イラストの透明感もイメージにぴったり。汕子や女仙らと日々うふふあははと優雅に過ごしながら、皆が泰麒の聡明さ優しさ謙虚さに夢中になってゆくのがわかる。10年のハンディキャップがそうさせるのだけれど、他のどの麒麟よりも小心で傷つきやすく悩みやすい心を持つ泰麒。思わずこちらも親の心で見守ってしまう。それでいて、どの麒麟よりも実はすごい能力を持っているような、未知なる大きさも感じる。だからこそ、泰麒が王を選ぶ段で苦悩する様子が胸に痛かった。驍宗もカッコイイし王の器なだけに…この決断、これから泰国はどうなってしまうのか。泰麒が自分を責める姿に悶々としながらも、景麒の計らいには感動した。この景麒さん、最初は感じ悪い?と思ってたけど読後は1番好きなキャラに。色々苦労してそう。。とにかく本当に良かった。…とりあえずは。
 
13年ぶりに読んで、昔ほどハマれなかったらどうしよう?なんて不安もあったが完全に杞憂だった。むしろ今の方が理解が深まって入り込める。キャラクターも全員好きっていうぐらい魅力的だしね。