すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

蠅の王/Load of the Flies (ねこ4.7匹)

イメージ 1

ウィリアム・ゴールディング著。新潮文庫

未来における大戦のさなか、イギリスから疎開する少年たちの乗っていた飛行機が攻撃をうけ、
南太平洋の孤島に不時着した。大人のいない世界で、彼らは隊長を選び、平和な秩序だった
生活を送るが、しだいに、心に巣食う獣性にめざめ、激しい内部対立から殺伐で陰惨な闘争へと
駆りたてられてゆく……。少年漂流物語の形式をとりながら、人間のあり方を鋭く追求した問題作。
(裏表紙引用)

※セーフな気もしますがネタバレ覚悟で書いてます。未読の方ご注意。




本書を読んで『十五少年漂流記』を連想しない人はいないだろう。私の子供時代の宝物だった
「名作全集」にももちろんこれは含まれていた。しかしなぜか『ロビンソン漂流記』派だった自分は
『十五~』の方は数えられる程しか読み返した記憶がない。のであまり覚えていない^^;
おおよそのあらすじぐらいは。。ってくらい。
本書はそれの暗黒版、と言えばいいのだろうか。
想像していた程心にダメージを受ける作品ではなかったのでほっとしたが、
テーマの深さは天下一品。欲を言えば、『漂流教室』より先に読みたかった。この漫画の結末は
「甘くない」と言われるが、本書を読めばいくらかは光があろう。最後に私が↓書いている要素は
この漫画の方が分かりやすく表現されているようにも思う。敵側を「悪役」として読むのは
間違っていると思うから。それは本書との「敵と味方、その関係の推移」の違いでもある。

ここにある世界は空想世界だろうか?
登場人物が全員子供であるのでまるで「年齢による愚かさ」「子供ならではの残酷さ」を
描いたもののように思える。しかし違う。自分が(大人)同じ目に遭った場合、
「自分は救助の為の火を絶やしたりしないし、排泄所もきちんと守るし、皆と違う所のある
人間を(たとえば容姿)よってたかっていじめたりしない。食糧を得るために協力は
惜しまないし、戦争ごっこと称して殺し合いなど馬鹿げている」。。ような気がするだろうか。
しかしそれは、あくまで今が平和であり、「いつか救助が来る」という状況が前提に立っていない
だろうか。救助が来ればマスコミに騒がれ生還を祝福され十分な治療を受け、また
平穏な暮らしに戻る事が出来る。ならば人として最低限の尊厳は守れるのかもしれない。
戻れないならばどうする?戻れてもこれよりもっと悲惨な状況が待っている場合は?

子供だけの世界ではない。これは人間全てに共通する根っこの恐怖だ。
尊厳を守っているうちが華なのか?いつだって私達は獣になれる要素を持っている。


まあ、実はあまり好みではないんですがこういうの。。(^^;)