すべてが猫になる

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探偵伯爵と僕 (ねこ3.7匹)

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森博嗣著。講談社ミステリーランド

理屈屋の小学生、「ぼく」こと新太は、ある日公園で探偵伯爵と知り合ってしまった。夏なのに
真っ黒な長袖の背広を着てブランコに乗っていて胡散臭い。それでも気になってしまったぼくは、
伯爵と仲良しになってしまった。そしてある日、近所の友人の少年が誘拐事件に巻き込まれて
しまってーーー。


おお!?正攻法で来たよ森さん!!
ミステリーランド執筆陣では「この人がどんなジュブナイルを!?」と期待<不安してしまう
作家の1人だったが、探偵伯爵の雰囲気といい、真正面から子供に向けたメッセージといい、
まともとしか言いようがない。個人的に「言葉遊び」のような会話や少年のモノローグが
自分に合っていたらしく、どうにも楽しくウキウキと読んでしまった。
ただ、後半は現実の事件を下敷きにしたと思われ、この結末も踏まえて
やはり結構キツい。本作のみならず、このシリーズは勝負に出ている作家が多いのかも。

細かい指摘をするならばそれこそ「メッセージが真っ当過ぎる」事や、主人公の少年のように
「国語が苦手」という子供にますます苦手意識を植え付けそうな感もあるが。
自分から見て、「ぼく」は国語が得意にしか映らないが。。。?わからない言葉を
次々質問し、自分なりに咀嚼するこの姿はまるで文学少年そのものじゃないか?
森さんの作品らしく、妙に子供らしさが薄く、活発というより利発、感情よりも理屈、という
人物像。もう少し抜けていた方が可愛いよなあ、というのは大人の勝手な言い分だろうか。
ラストにちょっとしたアレがあるが、トリックをメッセージに転化させたのはなかなか。。。

個人的にはとても楽しめた。趣味に合う。浦賀氏にもぜひ読んで欲しい。