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僕と先輩のマジカル・ライフ (ねこ3.9匹)

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はやみねかおる著。角川書店

念願の大学生となり、家賃一万円のアパートに入居した井上快人は、幼なじみで霊能力のある
春奈と楽しいキャンパス・ライフを満喫するはずだった。ところが、入居したアパートには
一癖も二癖もある変人や、オカルトグッズを全身装備した大学八年生の先輩・長曽我部が
住んでいて早くも波乱の幕開け。幽霊が出るアパート、プールに出る河童、謎を解くのは……!


は、はやみねさん、最高。
人格と小説の内容は切り離せると考えている自分ですが、倉知さんとはやみねさんの小説を
読むと「人柄で小説を描いている」人だなあ、と実感せざるを得ません。真偽はともかく、
自分はこの中の全ての文章から、表現から、モチーフから、優しさとユーモアと
キラリと光る洞察力を感じるのです。
ジュブナイル・キングだし、ミステリーとしての仕掛けや謎解きがソフトなのは
問題にもならない。かえって童心に戻りドキドキするくらいで。
ささくれだった自分の心を癒してくれるようなこの包容力は、はやみねさんにしかないもの。

本書のお気に入り点はやっぱりオカルト番長・長曽我部先輩。表紙から、てっきり
女性の先輩(探偵役)に翻弄されるお話かと思いきや、違いましたねー。逆に言うと、
春奈ちゃんの存在意義が自分的に薄かったな。小説の華として、もちろん女性の存在は
不可欠だし、霊能力が物語に機能しているのはわかるんだけど。
ワトスン役が快人君とすれば、ワトスン役のワトスン役はいらないなあ、と。。
この快人君の真面目すぎキャラも好感度○。ちゃんと子供に伝わると思う。両極端な
二人を出す事によって、選択させる余地と違う答えを出させる隙間がはやみねさんの
テクニックだなー、と感心するばかり。

いやー、私ほんとにはやみねさんは好きだなー。