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笑わない数学者 (ねこ3.9匹)

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森博嗣著。講談社文庫。

偉大な数学者、天王寺翔蔵博士の住む「三ツ星館」。そこで開かれたパーティの席上、博士は庭にある大きなオリオン像を消してみせた。一夜あけて、再びオリオン像が現れた時、2つの死体が発見され……。犀川助教授と西之園萌絵の理系師弟コンビが館の謎と殺人事件の真相を探る。超絶の森ミステリィ第3弾。(裏表紙引用)
 
20.4.29再読書き直し。
 
数学者天王寺博士の住む、津市にある三ツ星館に招待された犀川と萌絵。その三ツ星館では、博士が12年前に家人の目の前で庭にある重さ10トンのオリオン像を一晩だけ消してみせたという。そして今、同じようにオリオン像が消えた。さらに翌朝、博士の息子の妻とその息子の他殺死体が発見される――。
 
大掛かりなほうのトリックは記憶があった。今でこそ珍しくもないが当時はあまりの壮大さに引いていたんじゃないだろうか。そのトリックが分かれば殺害方法も自然と分かるようになっている。自分で謎を解いたようで今回は楽しめた。動機については「ある」だけでもご立派、といえようか。人間関係や生死が複雑で曖昧すぎるため最後は混乱したが。猟銃で狙われた理由や綺麗なシーツ、閉まっていた窓の謎など、一つ一つ犯人が綿密に、トラブルにも対処しながら行っていたので感心した。
 
ミステリ的にもきちんとした構成だった上、ラストに大きな謎を明かす(不明瞭ではあるが)など、最後の最後まで世界観がブレない。再読にあたって、こんなにも楽しめたことが驚き。何より天王寺博士のミステリアスさやキャラクターの個性が作品の特徴となっている。
 
それにしても犀川先生は萌絵の気持ちに気づいていながら曖昧な態度を取っていることに理由があったのだな。。萌絵が積極的でビックリする。女子学生2人に詰め寄られる犀川さんがかわいかった(笑)。