すべてが猫になる

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ゆび (ねこ3匹)

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柴田よしき著。祥伝社文庫

エレベーターのRボタンを押し惑う飛び降り自殺志願者。混み合うデパートの非常ベルを見つめる
主婦。彼らの目前に、突然「指」が現れた、まるでためらう気持ちにふんぎりをつけさせるかの
ように。そして、指はボタンを押すーー。東京各地に指が出現する事件が続発。幻なのか
トリックなのか?やがて指は大量殺人を目論みだした。(裏表紙引用)


柴田さんのホラーに初挑戦です。
個人的にホラーが好きなのと、氏のちょっと一風変わった発想力と強引な展開の特性から
鑑みて、きっとホラーは大得意に違いない、と考えまして数ある中から手に取った次第で。
きっとあの無茶っぷりと可笑しさがホラーでは生きるんだろうな、と期待するにもほどがあり。

「指」が出現する、というシンプルな発想はとても面白いと思った。別に普段自分や
他人の指って無意識に目に入ってるわけで、怖いなんて思った事は当然ない。
しかし、「指」だけそこにあったらやっぱ怖い。(そういうグッズ売ってそうだけど、
イタズラに使われそうだ。やっぱ「ぎゃっ」とか言うんだろうな)首だけなら(生きてる)
かえって笑えそうなんだけどなんでだろ。

しかし、展開としては核ミサイルとか太平洋戦争とかスケールがでかくなってしまって、
だんだん好みから遠ざかってしまったかも。身近なものを壮大に、広い視野で、というものの
良さももちろんわかるが、自分が読みたかったのはやっぱり身近な心理的恐怖なのだ。
ドラマ性はあったが、ホラーに求める「背後の恐怖」「心の闇」「ユーモア」側へは
近づけて来なかったのが残念。相変わらずの一気読みさせる面白さは健在だったけれど。


まあ、これだけ作品があればいくら「ファンになった」と言ってもどれもこれも
大当たりするとは思っちゃいない。本書が悪い作品だと言ってるわけではないので
あしからず。