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赤い指 (ねこ4匹)

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東野圭吾著。講談社


待望の加賀シリーズ最新作ですよ!(T^T)。※未読の方は以下読まない方が良いです。

前原昭夫は、妻子に疎まれ家に帰りたくないが故に残業に明け暮れる毎日だった。認知症となった
母と同居し、息子は友人を作れず反抗的で引きこもりの傾向を持つ。それ以外は至って平凡な
家庭だったが、ある日、妻の八重子からかかってきた一本の電話が一家の運命を変えてしまった。
自宅の庭に放置された、行方不明中の少女の絞殺死体!犯人は息子だった。彼らは、犯行を
隠蔽するためにとんでもない計画を立てるーーー。


ちょっと自分、本書を読むまでに他の方の書評を読みすぎてしまった模様。で、『時生』と
同じ轍を踏んでしまったご様子。

加賀刑事のスーパーウルトラ敏腕万能超ド級顔彫深刑事ぶりは最高点に達している。
ただ頭が良いだけでなく、聞き込みでの独自の気配りやパートナーである従兄弟の
松宮がただの引き立て役と化していて哀れになるほどの恐ろしい洞察力。
彼と組んだ刑事は、『すごい現場に立ち会う事になるぞ』と言われるらしいから凄い^^;
サイドストーリーである加賀の家族物語も、最後にこんな痺れるエピソードを持って来られては
加賀ファンは軒並みノックアウトだろう。かくいう私も^^;

そこに不満はないが、本編である倒叙形式となった犯罪、そちらはどうしても物足りなさが残る。
まず、八重子の存在。「東野氏の描く女性像はいまいち」というパターンに見事に
乗っかってしまったのだろうか。と思ったが、リアリティだのなんだの指摘する以前に
これではただの○○である。(言葉が悪いので伏せ字。Bのつく二文字を当て嵌めて下さい。)
子供を愛するあまりに愚かな行為に走る人間像、とはとても自分には映らない。
これは元々の人格に問題があろう。その割にラストはやけにあっさりしたもんだ。

残念だったのは、昭夫の母が仕掛けた企み?が早い段階で自分に見抜けてしまった事。
最後に「泣ける」「破綻する」のならばコレだろう、いかにも東野さんらしいサプライズだ。

普通に一気読みするほどの面白さと興奮は味わえたのだが、個人的にはこれほどの
問題提起とテーマを扱った作品であれば、もっと長く、ずっしりと来る濃密度が欲しかった。
テクニックは感じるが、上手にまとめすぎ。

え、その割にねこが多い?それは貴方、加賀刑事に捧げたものですから。