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レベル7 (ねこ4.2匹)

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宮部みゆき著。新潮文庫

レベル7まで行ったら戻れないーーー謎の言葉を残して失踪した女子高生。記憶を全て失って
目覚めた若い男女の腕に浮かび上がった「Level 7」の文字。少女の行方を探すカウンセラーと
自分たちが何者なのかを調べる二人。二つの追跡行はやがて交錯し、思いもかけない凶悪な
殺人事件へと導いていく。(裏表紙引用)


いやいやいやいや、面白かった!!!!!!
650ページ強の大作だが、あっという間に読了。漢字使いが少なく、会話の頻度が高いので
ストーリーの面白さも手伝ってか一気読みだ。

記憶喪失の男女がマンションの一室で目覚める、という出だしは「え、SF?」かと
危惧したが並行して進む女子高生失踪事件と徐々に絡んで普通にミステリーである事が判明。
「普通」。そう、目覚めて記憶を失うなんて使い古されているし女子高生の失踪なんて
カビの生えそうな題材だが、次第にその平凡な二つの事象が驚くほどにオリジナルな展開を見せる。
二つの事件が繋がってゆく様に無理はなく、謎が徐々に解明されて行く過程も、その
出し方がうまい。
しかし、あくまで適度な緊張感、適度な驚愕の真相、適度な問題提起。

個人的に終始退屈な箇所がなかったのだが、不満点があったのは確か。
堂々のタイトルであり、一番の大きな謎である「レベル7」、その意味がちょっと
期待ハズレというか、もう少し物語に大きな意味があれば良かった。
後、宮部氏にしては「一家惨殺」「悪徳病院の実態」という重いテーマを扱っている割に
作品の雰囲気が妙に軽い。そのためか、自分と一体となって読めるような登場人物が
皆無だった。結果、あまり心は動かされなかったかもしれない。
ラストシーンは普通に染みたが。

とは言え、「火車」ほどの充実感はなかったものの辛くはならず暗く重い気分にもならず
無心で楽しめた事は間違いない。
実際、宮部氏のこういう作風も自分には合う事が分かって良かった。