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塗仏の宴 <宴の支度><宴の始末> (ねこ4.1匹)

京極夏彦著。講談社文庫。

『塗仏の宴 ~宴の支度~』と『塗仏の宴 ~宴の始末~』の2冊完結版。
「支度」だけでも一応の完結はしているとの事だが、謎が中途になっているし
全ての事象が「支度」では披露されていないので絶対「始末」も読むべき。
「始末」から読むと、確かに更に新展開を見せて始まる(というかまた別所から描かれる)のはいいが
いきなり関口君がとんでもない事になっているのでファンの方の心臓にはよろしくない。

今回は中禅寺秋彦と我らの榎木津礼二郎がタッグを組んで、かなり京極堂の内面を
掘り下げてくれるのが読みどころだった。当の京極堂は相変わらずそっけがないので
三者が「京極堂が事件の経過、真相を語らないのはなぜか、拝み屋という立場とは
一体どういうものなのか」を説明する形となっている。その点が物足りないが、
それはまた今後に期待という事で。
そして、今回やたら登場人物が多い。自分が苦労したのでこれからの人はメモをとることを
おすすめしたい。

物語に宗教、催眠術が絡んでいる。それが次々出て来る妖怪話に独特の妖しい雰囲気を添えて、
シリーズ中でもトップじゃないかという禍々しさがある。自由意志とは。家族とは。
私には本来難しいが、京極氏の滑らかで美しい文章力で自然に自分の脳内に説得力と
映像に転化させる程の柔軟さを持って染み込むから不思議だ。
また、ミステリーとしてもラストにドラマティックな愛憎劇と意外性が合わさって
綺麗な収束を見せる。謎が少し残るが減点どころかこの世界観としての味にしかならない。

ところで、私の愛する榎木津さんは今回多くの名言を残してくれた。榎木津語録を作るなら、
本書からの抜粋が多くなりそうだ。
「僕が起きた時が朝じゃないか。僕が寝たら夜だ!」ひー。え、えのさん。。。

毎回同じ事しか書けなくて恐縮だが、私には欠点を挙げようがないのが京極夏彦だ。
その理由は文章の力としかまた言いようがない。

それにしても、関口君はほったらかしでいいのだろうか。。。^^;