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そして誰もいなくなる (ねこ3.7匹)

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今邑彩著。中公文庫。

天川学園。名門女子校百周年記念式典で、高等部演劇部がクリスティの名作『そして誰もいなくなった』を
上演する。その舞台の真っ最中、原作通りに一番目の被害者役の生徒が毒を呷って死亡する。学園は
パニックとなるが、その後も台本通りの順序で生徒が次々と犠牲になるという見立て連続殺人と
発展。演劇部部長の江島小雪と顧問の向坂典子は、次は自分の番かと恐れながらも独自に犯人探しへ
立ち向かって行くがーーー。

特別群を抜いた人気作家ではないが、作品の一つ一つが一定以上のクオリティがあり、ハズレがなく
万人受けしそうに読みやすい。今邑さんは、1、2年前にやっと見つけた「読破したい作家」の
一人。
しかしなにぶん作品数が多く、今旬の作家として話題になっている訳でもない為次はどれを
読んでいいか迷う。そこで、その中でも作品名をよく聞き、人気が高そうな本書をやっと見つけたので
早速読んでみた。

ううむ、やっぱり面白い。クリスティのこの名作をモチーフ(見立て)にしたミステリーは
たくさんあるし色々と自分も読んだが、その中でも本書はトップレベルの面白さを放っていると思う。
あまりにも3、4番目の被害者あたりから狙われている人間として行動に緊張感がなさすぎ、原典の
二番煎じかと危惧しそうになるが、読者が飽きる前に意表をついた展開に発展させていく。
原典を知っていればこそその違いの面白さや誤誘導されまいと背筋も伸びるが、これはそのまま
最後の二転三転するどんでん返しを力を抜いて楽しんだ方がいい。

ここからは私の完全に個人的な印象になるので参考にしないでもらいたいが、
やはり今読むには少し古さが辛い。
もう一つ、全体的に読んでいて感じた事。
登場人物の心理や行動が、どうも石持浅海氏っぽいのだ。一度引っかかると私はなかなか
気持ちをリセット出来ない。ステロタイプというのでもない、時代性でもない、
「え~、そんな事普通にするかぁ?」「この心理はおかしいよね」というような、
描写しようとしているがための違和感が始終つきまとって離れなかった。。