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悪いうさぎ (ねこ3.6匹)

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若竹七海著。文春文庫。

葉村晶はフリー契約の女探偵。今回の依頼は、家出していると見られる行方不明中の女子高生の
平ミチルの居所を突き止め、連れ帰る事。ミチルは見付かったが、新たにミチルの友人である
美和という少女が行方不明になっていた。そして、さらに調査の結果他にも行方不明となった
少女がいることが判明。真相を探る晶だが、彼女にも悪の魔の手がーーー。


葉村晶シリーズ第3弾。初の長編です。
長編にして殺人事件の捜査ではないので少し謎としては自分には不足といった感じがしました。
その分、ストーリーが目まぐるしく展開するので飽きるという事はなかったですが。
このシリーズを追って来て、ここで初の収穫は、葉村さんの人間としての個性が
はっきりして見えた事。影のある家族関係も過去を説明で描写するよりも、彼女が
本の中の一人の人間として個を確立する、それこそが私の好みであり、物語に入り込める
一要素です。
彼女の周りを取り巻く人間達も個性的で生き生きと、葉村さんにとっても彼らが必要であり、
彼らが葉村さんを好いている事が伝わって来ます。酷い言葉をぶつけられたりもする彼女ですが、
晶さんの困難に立ち向かうバイタリティと、他人の不幸に自ら傷つく事ができる優しさで
全てに打ち勝ったような、暗闇のトンネルから見える光のような爽快さを残してくれました。

本書で取り沙汰されていた「暗さ、重さ、気分の悪さ」ですが、自分は想像していた程では
なかった気がします。確かに、これが初めて読む作家さんで、「あら、うさぎ可愛いわv」と
このキュートな表紙だけに惹かれて読んだのであれば引いたかもしれませんが。
この事件がたいしたことないじゃん、という意味ではなく、もの凄く悪質で許し難い
不快なものであることに違いはないですが。若竹デビューが本書だったらやばかったかも。

それよりも、残ったのは最初に述べた事柄でしたね。
面白かったです。結局、首の後ろのアザ、謎の男の正体はさっぱりわかりませんが、
これは続編があると期待して良いのでしょうね。ね?