すべてが猫になる

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サウスバウンド (ねこ3.6匹)

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角川書店

上原二郎は、東京在住の平凡な小学六年生。両親と、姉、妹の5人家族。しかし二郎の
父親は元過激派で、作家志望で毎日家にいる。それが普通だと思っていたが、どうやら
周りのお父さんは違うようだ。父親は今でも官僚を嫌い、国の税金システム、教育システムを
厭い、修学旅行の積立金が高いと二郎の学校にまで出没し大暴れする。どうやら父は
沖縄へ永住したいようだーーー。


大長編ですね。読み甲斐があるボリューム。
第一部はほとんど二郎の、迷惑な父親と学校の不良との軋轢という問題に板ばさみになって
奮闘するというスリルあり涙ありのテンポいい成長物語です。面白かったなあ~~^^
父親がアレだと子供は碌な子にならないと言ったのは誰だったか、いやいや
反面教師というのか、とても小学生とは思えないしっかりした大人びた、どこか諦観した
強さを培って行きます。それでいて、優しさと社会の理不尽さを学校の人間関係からも
学び取って行く。読み方を変えればちょっと悲惨な家庭環境も、奥田さんのテンポある
筆致が爽やかさも伴って、決して重さを感じません。

人間、生まれて来る家は選べない。でも、人生は一つしか生きられないのだから
その中でどう生きるか。できれば二郎もサザエさんのような家庭で育ちたかったのでしょう。
それでも、今ある家族を愛する。その心理がうまく描けていると思います。


しかし、沖縄へ飛んじゃった期待の第二部。
東京での生活があるからこそ、その落差が映えるんでしょうがあまりにも物語的の面白さという点での
落差にもなってしまった感が。
単調、単調。
結局家族小説という事で、これでまとまっているとは思うんですが。。
父親への好感度も一気に上がりましたしね。
だけどやっぱり自分は「両親が五体満足で健在」、という家族小説には
読んでてどこか大きな壁のようなものを感じてしまう。
読むなら、自分とは全く関係のないものか思い切り共感できるものがいい。狡いんですよ。