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ミステリーズ <完全版> (ねこ4.7匹)

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講談社文庫。1995年『このミステリーがすごい』第1位作品。


DISC-1
『密室症候群』
  海外ホラーとミステリの融合だろうか。心理療法士の男が担当する自閉症の少年と母親。
  執筆する密室ものミステリの挿入。奇抜な設定に驚いている暇はなかった。驚愕のオチが
  鳥肌を立たせてくれる。

『禍なるかな、いま笑う死者よ』
  これは素晴らしい。落ちぶれた、老いたコメディアンの狂気と理不尽な目に遭うプロデューサーの
  底の知れない恐怖。「笑い」を恐怖にすり替えるアイデアと、この先の読めない展開には脱帽。
  

『いいニュース、悪いニュース』
  これもお気に入り。なんかのパロディかと思うようなご都合主義的ベタなストーリー。
  おそろしくB級で、ブラックユーモアが効き過ぎ。最高。

『音のかたち』
  音響怪談というらしい(笑)。ちょっと私にはちんぷんかんぷん^^;;
  なんだろう、この不気味さは。。意味のわからない専門用語が恐怖を引き立ててる感じ。

『解決ドミノ倒し』
  出たー!インチキ海外古典!^^ちょっとしつこすぎない?と思ってたら
  オチでやられた。なんだかわかんないけど興奮しました。

DISC-2
『「あなたが目撃者です」』
  これ好き!大好きです!構成が凝っていて変わっていて、それでいてストーリーとオチは
  シンプルにがつん、と来る。

『「私が犯人だ」』
  って、言ってるのに警察に無視される男。どうですかこの発想!透明人間のように、
  身体がすり抜けるとか見えてないとかじゃなく、肩とか叩かれたりしてるんですよ?
  面白過ぎます。
  オチ、もう少し面白いかと思ったけど^^;すいません。

『蒐集の鬼』
  SPレコード蒐集家の男のお話。いやもう、コレクターって面白いです。この必死さと
  脳内心理が^^;取り憑かれてる感じ。本人はそれが好きで好きで、生き甲斐を感じて
  幸せを自覚してるんだけど、はたから見ると実際は物に振り回されてて、その様が非常に
  うまく描けてるなあ、と。ちょっと哀れだなあ、このラストは。笑っちゃったけど^^;

『<世界劇場>の鼓動』
  …………えと、すいません、これは意味がさっぱり^^;;;
  音楽を題材にした短編集という事で、狙いはあるはずなんですがイラストもないし
  イメージが音でも映像でも浮かびそこなった感じです。。

『不在のお茶会』
  アリス登場^^;これも合わないなあ。どうでもいい…。『私とは何か』なんて。


以上。

これと似た風合いの『マニアックス』の最初3編と、コレのラスト2編を入れ替えて
『ミステリックス』みたいな題で編集したいなあ。家宝になるのに。え、それじゃ意味ない?^^;

LPアルバムに「流れ」があるように、これ1冊で一つのミステリーズという
音楽短編集というコンセプトなんですかね。
自分は、ひとつひとつのお話が凄く面白かったのでもうなんでもいいや、面白いからいいやという
感じで。ファンの方には申し訳ないですね^^;
いや~、しかしいいわあ、山口さんの短編。国内でこんな作家がいるなんて稀有ですよね。