すべてが猫になる

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ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ (ねこ3.2匹)

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滝本竜彦著。角川文庫。

デビュー作。
平凡な高校生・山本陽介の前に突然現れた、隣の高校の生徒である雪崎絵理。ある日、陽介は
彼女がチェーンソーを振り回す男と闘っているのを目撃、混乱しながら加勢するも見事に彼女の足を
引っ張ってしまった。それがきっかけで、毎晩彼女と共にチェーンソー男と闘うことになった陽介。
彼女はなぜ生死をかけて闘っているのか?そして、陽介はーーー。


今、ライトノベルが熱い。……かどうかは知らないが、とにかく少なくとも仲間内ではbeckさんと
私がなぜか熱いようだ。本作は作家が以前から気になっていて、beckさん宅にてふと
取り交わされた会話がきっかけとなって購入した。「いやあ、僕も滝本さんには注目していて」
「えっ、ほんとですかぁ、私もなんです!」「僕は今ライトノベルを積極的に楽しんでいるんだ。」
「素敵!beckさん!私も参考にさせてぇ~」「わははは、僕に付いて来たまえ」「beckさ~~~ん」
…………なんていう会話が繰り広げられたかどうかは知らないが、最近そういうわけで
beckさんと同じ本をアップしつつある。ご興味がおありの方は(いるのか)、記事を
読み比べてみて下さいな^^。

寝言はさておき、感想を。

はっきり言うと、これは好みではなさすぎた。。。
今風の言葉遣い、会話に頼ったストーリー進行、唐突な男女の出会いとご都合主義ばかりの
こじつけで進むばかばかしさ。
アウトだ。
アウトのはずだった。
しかし、やめられなかった。イッキ読みした訳でもないし、目の前には面白そうなミステリが
山積みだし、いくらでもやめる口実はあった。「読み始めたからには最後まで読む」なんて
ポリシーならとっくに捨てている。
これは、読みやすかったという理由だけではないと自分では思っている。

チェーンソー男の正体はそもそも重要でなく、彼ら目的のない若者がせいいっぱい生きて行く為の
何らかの象徴らしい。つまり、このばからしい設定にウケるなどという、インパクトだけで
中身のまるでない小説ではなさそうだということ。
随分個性のない主人公だな、と思っていたのも、これが山本陽介なんていう平凡な
ライトノベルにあるまじき!)名前であることからこの世代の全ての若者を具現した姿だと
いうことも考えられる。
そうでなければ、こんなありきたりのエピソードを使って(死んだ友人に叫ぶという)、
こんな輝かしいラストシーンになるわけもない。


本書が電撃文庫でも角川スニーカー文庫でもないのが不思議だが、
立派なライトノベル。こういうジャンルが、こういう文体が、こういう文学が
存在するのだと認めてしまえば、文章力がどうの設定がどうのなんていう指摘は
お門違いだろう。あとは好みの問題だ。

うーん、めちゃくちゃいいとも思わないし、やっぱり好きでもないし、もう滝本氏を
定価で買おうなどとは思わないが。
気に入らない本はすぐに処分する性質の自分が、(途中まではそのつもりだった)
読後いそいそと本棚の「た」のコーナーに並べてしまったことをお伝えしておきます。(誰に)