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悪意 (ねこ3.7匹)

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講談社文庫。

加賀恭一郎シリーズです^^(にこにこ)

人気作家である日高邦彦は、妻と共にカナダへ一時期移住することになっていた。自宅は
仕事道具と電話以外はほとんど海外へ移動させており、そんな中、仕事場にて
日高が何者かに殺されてしまう。第一発見者は日高の幼なじみで児童文学作家の野々口修。
その野々口修の手記と、加賀刑事の「記録」で構成された技巧ミステリ。
早くも逮捕された犯人が決して語らない「動機」は何かーー。


ふーん、「眠りの森」の続きは引きずらないんだ。。。。←不満げ

ということで、全く独立した形の加賀ミステリ。今世紀トップを独走するミステリ界一の
男前、加賀恭一郎の過去が今明らかに!本作の物語のテーマと、加賀さんの過去のリンクは
なかなかのテクニシャンである。

よくある平行的な進行の、語り手を変えることによって謎を提供し伏線を張り巡らせた
体裁のもの。かと思いきや、事件は初盤で早くも一旦解決を見せる。え、もう?
そして、「動機」の捜査というホワイダニットにこだわった形式。これは面白い。
決まりきった展開にはなってくれないのが東野ミステリの醍醐味。

最後に明らかとなる「悪意」は恐ろしく哀しく、そして弱い。タイトルにもなっていて
インパクトがあるが、
私は犯人自身が、過去に他人から感じた「悪意」の方が強く印象づいてしまった。
こちらの方が自分には感情を汲み取りやすい。
犯人が日高に抱いた「悪意」はあまりにも粘着質で痛々しい。これでは本当に
悪意の発生源が不明のまま、加賀さんの心情も察してあまりある。

技巧面が前に出た作品だったせいかもしれないが、正直少ししっくりこない
もやもやとした読後感だ。
それが凝ったミステリの技巧としてのものか、そうでないのか。
実は私は今、正直わかっていない。