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バイバイ、エンジェル (ねこ3.8匹)

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笠井潔著。創元推理文庫

矢吹駆シリーズ第1弾。著者のデビュー作です。
ヴィクトル・ユゴー街のアパルトマンの広場で、血の池の中央に外出用の服を着け、うつぶせに
横たわっていた女の死体には、あるべき場所に首がなかった!こうして幕を開けたラルース家を
巡る連続殺人事件。司法警察の警視モガールの娘ナディアは、現象学を駆使する奇妙な日本人
矢吹駆とともに事件の謎を追う。(裏表紙引用)


副題が『ラルース家殺人事件』という事で、なるほどヴァン・ダインなんですね。
……とは言っても、読んでみるとダインの雰囲気がそれほど濃密でもなくなって来ます。
「難解、読みにくい、哲学の蘊蓄が濃い」という前知識があったのでいかほどのものかと
思っていましたが、全然読みにくくない。普通に翻訳ものを読んでいる方なら余裕でしょう。
これならクイーンの国名シリーズとか、カーの方がよっぽど読みにくいぞ。
それよりも問題なのは、カケルの現象学の蘊蓄の方でしょうよ^^;
格好つけるのは性に合わないので「あたしゃあんたの言ってる事全然わかんねーよ!」と
吐き捨てておきます。雰囲気でいいのよ、雰囲気で。
本格ミステリとしては、古くさいなんて言わずにここは「スタンダード」。
決して現在のナニと比べて見劣りはしない。発表年を考えたらうならせるものあり。


で、カケルについてですが。
私の現時点での印象は、はっきり言って「非常に微妙な魅力」です。。
一日一食とか、簡素な生活とか、エロスを感じさせない所とか、残酷でいて孤独さを
醸し出しているところとか、本来ひじょ~~~に私好みの青年ではあるのです、が。
最後にして最大のポイントである、「人間らしさ」の一面が、管理人への小さな気配り、
その1点だけだったというのがどうも^^;なんだか、作者の意識的なキャラ作りとして
そのアピールが浮いて見えてしまって。。
まあ、エピソードの王道、「雨の中犬を拾って帰る」よりはいいか。


べるさん、たいりょうさん、こんな感じになりました。ねこ数はこんなもんで。
いかがでしょ?^^