すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

彼女はたぶん魔法を使う (ねこ4匹)

イメージ 1

樋口有介著。創元推理文庫

元刑事でフリーライターの柚木草平は、雑誌への寄稿の傍ら事件調査も行う私立探偵。今回
もち込まれたのは、女子大生轢き逃げ事件。車種も年式も判明したのに、車も犯人も発見されて
いないという。被害者の姉の依頼で調査を始めたところ、話を聞いた被害者の同級生が殺害される。
私生活でも調査でも、出会う女性は美女ばかりで、事件とともに柚木を悩ませる。(裏表紙引用)

「柚木草平シリーズ」第1弾。

どかーん。当たり当たり大当たり!!冴さんありがとう!!こいつぁゆきあやの好みど真ん中!!
タイトルと表紙の雰囲気からし米澤穂信系かと思いきやとんでもない、
さわやかでありつつも人間の醜さと欲望を描き込んだハードボイルドだったのですねー。

でも実は、主人公の柚木のキャラは個人的にアウト。(男性として、だ。文句あるか^^;)
こういう歯の浮くような台詞をちゃらけて日常的に言うような男性はいくらイケメンでも、
探偵として優秀でも、独身でも(そこ重要なのか…)絶対好きにはなれない。
わかっているさ、でも実はこういう男性が一番不器用で繊細なんだってことは。
実際モテるんだろうさ。

それをおいても楽しめたってことは台詞回しのセンスの良さと、文章のテンポの良さに拠るものか。
そして、決して人物像を書き込んではいないのに最後に明らかとなるそれぞれの登場人物の
奥に潜む醜さと哀しさ。
生きて行くためには決して表の顔だけでは測れない何かがある。
それが物語の雰囲気として重くのしかからないのは、
柚木という人間の持つ価値観の魅力ゆえか。完璧でない人間くささもシリーズキャラとして
外せない、継続して読ませるポイントに映る。
認めたくないけどね。