すべてが猫になる

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ほうかご探偵隊 (ねこ4匹)

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講談社ミステリーランド

小学5年生の高時君のクラスで、不思議な「連続消失事件」が発生した。なくなったものは、
たて笛の一部であったり、棟方君の絵であったり、神宮寺君の設置した巨大まねき猫型募金箱
だったり、はたまた飼育小屋のニワトリだったり。この不思議な事件を解決してみないかと
龍之介君に誘われた高時君。クラスメイトの女子2人も加え、少年探偵団は捜査を開始した!



たいしてこのシリーズに関しては数読んでいないが(5冊目)、価格が価格なので一応
仲間うちでの評判だけをアテに順に随時購入している。損したくないからね。
本作はおそらく1、2(乙氏が出るまでは圧倒的No.1だったと思う)位ほどの高評価を
得ている作品で、しかも私の大好きな倉知さん。面白くないわけがない。
これはジュブナイルとしては傑作の部類だろう。

人殺しの起きない、はたまた宝を求めて冒険という内容でもない。起きるのはクラスでの
盗難事件という日常的な謎だ。かと言って実際こんな事件はそうそう起きやしまいが。
ミステリとしては大人には見え見えの真相という訳でもなし。
謎を解くための「過程」が丁寧なのも気に入った。
頭脳だけでなく、行動し、協力し、その上で「観察」する探偵団たち。飽くなき好奇心。
子供の目線から見た「大人」の描写もユーモアがあってさらにリアルだ。
この後、
冒険ものなら「転」で「ピンチ」が到来するが、本作ではその趣向を採らなかった。
代わりにあるのは、不安を煽る日常に潜む人間の恐怖、押し寄せるネガティブな思考。
乗り越えた先にあるものは、そう、やっぱり日常にあるドキドキと爽快感。

このささやかなエピローグにも倉知さんのミステリーへの想いと、伝えようとする
気持ちが溢れている。ちょっと感動してしまった。
まだまだ読んでいない面白いミステリーがあるのは私達大人だって一緒なんだから。