祥伝社ノン・ノベル。
前作、『陽気なギャングが地球を回す』の続編です。
人間嘘発見器の成瀬、演説の達人響野、正確無比な体内時計の持ち主雪子、
スリの天才久遠。それぞれが織りなす日常のささいな事件。
そして、前半でばらまかれた伏線は、4人組の巻き込まれた社長令嬢誘拐事件と
つながってゆくーー。
予告通り陽気に入手しましたが陰気に読み終わりました。
前作は伊坂作品の中でも極端に好みでなかった事は記事に理由とともに
書き連ねまくりましたが、「今作は意外にも良かった!」なんて都合良く
私の中の地球は回らなかったようです。
石を投げられるのを覚悟で書きますが、「好きだけど、面白くなかった」。
各章の「似非」広辞苑抜粋や、スタイリッシュで洒落た会話のセンスは
突出した感じ。
伏線の多さが取り沙汰されていますが、これは全て単なるリンクではないでしょうか。
核となる謎がないため、別に隠されたものでもないしサプライズでもない。
伊坂氏の作品で多く語られる「先の読めない展開」や、そのスリルが今回
全く表出しておらず、どういうストーリーなのかがわからないまま事件は終わる。
「社長令嬢誘拐事件」は「社長令嬢誘拐事件」でしかなく、という事。
期待していた人間同士の心のつながりや泣かせる決め台詞や風刺性もなく、
4人それぞれが抱える事情についてもまさか掘り下げて来ないとは思いませんでした。
これでは、テーマが不在のどたばたサスペンス。
いっそ、前半の体裁を保って連作短編集に徹してくれれば
気に入ったかもしれません。
1話目などは脇役までもが光ったソフトなミステリーで、快調な滑り出しだったので。
次回があるなら、せいぜい銀行強盗に精を出してくれよ、などという
勝手な感想を抱いてしまった。そうか、やっぱ前作は自分なりに面白かったのだな。なんて。