積木鏡介著。講談社ノベルス。
3人の幼児の腹を切り裂いた怪物が19年後に蘇った。いわくつきの屋敷の地下室には
臓腑をさらした幾多の死体。警察が包囲する中、犯人はどこに消えたのか。謎の中心には
不幸に取り憑かれた芙路魅という少女が。酸鼻きわまる連続猟奇殺人の「間」に流れ込んだ
「魔」の正体はーー?
ちょっと今日お疲れモードなのであらすじは背表紙引用いたしました。お許しを。ひらに。ひらに。
このあらすじを書くと読んでくれる方少ないだろうな、という事は十分承知の上。
この作品は「やばい」という風の噂を聞いていたのでかなり腰が引けながら読みましたが
130ページ弱という薄さと、先入観に逆に助けられてか無事に読了いたしました。
グロシーンが顕著だけれど別に目をつぶるほどではない。(字だけど)
これなら綾辻氏の「殺人鬼」や我孫子氏の「殺戮にいたる病」の方がよっぽどグロい。
本作程度の描写ならば容易に乗り越えられるし、常識的に、倫理的にどうよ?という
体育倉庫のエピソードもむしろ脈拍が速まるぐらいさ。好きだと言えば「すべ猫」管理人としての
人格を疑われかねないので
本当はひっそりと自分の部屋だけで楽しむのが理想でしょう。
それよりも、本作の文体と体裁が気になりました。
今までと、違う。
漢字という漢字を徹底的に変換している黒い文章や、オカルトのエッセンスをふりかけた
ダークな雰囲気は健在だけれど、
前2作にあった不条理さ、西洋風の暗黒文学か(知ったかぶり^^;)といった積木さんに
こちらが求めるものが完全に背後に廻ってしまっている。
もちろん作品は空想の中だけでしかリアリティという言葉を持ち得ない性格のものだけれど、
積木さんの文章からさっき書いた要素を排除してしまうとごく普通のサスペンスという
印象しか残らなかった。それがそのまま自分の不満として残ってしまいました。
今思うと、「間」に流れた「魔」だの「芙路魅だから不死身よ」だの、
ただのダジャレかぃ、と冷静につっこむ余裕すらあった。
この作品と、自分との温度差ということかもしれない。