すべてが猫になる

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珊瑚色ラプソディ (ねこ2.9匹)

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岡嶋二人著。講談社文庫。


シドニー(オーストラリア)から1年半ぶりに帰国した里見は、婚約者の彩子が
沖縄旅行中に盲腸で倒れ入院したことを知る。早速病院に駆けつけた里見だが、
彩子は2日間の記憶を失うという軽い健忘症になっていた。一緒に旅行していた
はずの友人、乃梨子も行方不明だと言う。不安がる彩子だが、里見はほんの少しの
猜疑心から独自に真相を探り始めた。
しかし、乃梨子は沖縄旅行には行っていないという母親は言い、彩子は民宿に
遠藤という男と宿泊していたという証言を得る。
だが里見は動揺しながらも彩子を信じる事に決め、二人は真相を追い始めた。


ううむ、岡嶋さんにしては「普通」のサスペンス。
結婚前の彩子が、愛人と最後の旅行をしていたのか?という謎や、
閉鎖的な宇留間島の人々の何かを隠している的なエピソードは面白いけれど、
「起こった事柄を逆に辿っていく」形式であるためスリルに乏しい。
まず謎があり、事実があり、そこから矛盾点や道程を辿り次々と新たな
事実が浮かび上がっていく。
そこに推理の楽しみはなく、ただ明らかになって行く不思議な事象に
ふむふむとうなづく、自分はただ読んでいるだけの人と化してしまった。

全く伏線がないわけではないけれど、真相を先読みするにはこれは
労力が必要かも。むしろそんな必要もない。

真相には度肝を抜かれました。と言うと大袈裟ですが、気を抜いて読んでいると
最後にちょっと動揺してしまいます。
この真相が書きたかったストーリーなのでしょう。

しかし、気持ちはわかるが本当にやってはダメだろう、というこの犯罪。
身内ともなれば違うのかもしれないけれど、閉鎖的な風習のある地方での
結束力というのがそら恐ろしくなりました。
ここまでで十分考えさせられる完成度はある。だからこそ、この
さわやかなラストシーンには私、どん引きしました。


ちなみに、本作は一定の評価を得ている人気の作品ですので
一人の読者の好みの問題としてお流しくださいませ。