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あくむ (ねこ3匹)

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井上夢人著。集英社文庫


「夢か現実か」を共通テーマとした、5編収録のホラー短編集です。

井上氏の作品は、長編しか読んだ事がありません。
短編集でホラーともなればさぞや新鮮であろう、と期待は高まりつつ
不安があったのも事実。
と言うのは、
井上氏の独特の世界観へ身を委ねる事は、置き去りにされるという事と同義だったからです。
自分の感覚とのズレ。
物語力に長け、心理描写の群を抜いた巧みさを持つ氏の小説は
確かに自分は面白く感じ、ページをめくる手はいつも止まらない。
だけど、終盤でいつもその「ズレ」が何とも言えない据わりの悪さとなって
滞積してしまうのが悩みの種だったのです。(大袈裟か?^^;)


そして、この短編集のお話になるわけですが。
やはり、ズレる。特に、「ゴールデンケージ」の結末は一体なんだろう?
全く解釈が定まらないわけではないけれど、単純に「気に入らない」の一言で
片付けられる作品でもないのです。面白いんですから。
後に続く、「インビジブル ドリーム」でも同様。
むむう。。


うざい蘊蓄は以上としまして、全体的に言えばかなり高水準の作品ばかり。
最初の3作は、なかなかの好み。オチもブラックで気が利いてますね。
すべてを長編で読みたい気もします。
いや、このネタを短編にすっきりムダ無く纏められるのが井上さんの手腕であって
そういう意見は野暮なんでしょうね。