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確率2/2の死 (ねこ3.9匹)

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光文社文庫。吉敷シリーズ第5弾。文庫書き下ろし。


人気プロ野球選手・川口の息子が誘拐された。身代金は一千万円で、
現金の受け渡しを請け負ったのは我らが吉敷竹史。
吉敷は犯人の指示でさんざん赤電話から赤電話へと走り回されるが、
六回目の電話の犯人の指示は、「身代金はいらない。子供も返す」というものだった。
一方、公団に住む主婦の甲斐佳子は、毎週火曜日にベランダから
公団の周りをぐるぐると約2時間弱走り回る白いライトバンを目撃していた。
だが、そのライトバンが通ったはずの道に連なる商店街の人間は、誰も
そんな車は見ていないという。
そんな折、謎の男に接触された佳子は夫が会社を辞め、借金を抱えていることを知るがーーー。


所持する本には一応「吉敷シリーズ5」と書いてあるのでその通り記載しましたが、
読んだ感じ、通子さん事件より前のお話っぽいですね。時系列がよくわからないシリーズです。
ご存知の方おられましたらご教示くださいな。


犯人が途中で犯行を放棄するという、一風変わった誘拐ものです。
冒頭でいきなり吉敷さんが全力疾走!!どうやら誘拐事件らしいぞ。
この捜査方法と犯行方法にはどうしても時代を感じてしまいますが、
それはいいでしょう。それよりも、書き下ろしという事か、枚数の都合か、
さくさくと端折り過ぎなストーリーですねえ。
スリルもないし、なんだか勿体ない気がします。

終盤に近づくにつれ、吉敷さんが迷走してしまうのもらしくない。
1人目はともかく、2人目の犠牲者はちょっと必然性に乏しく感じました。
しかし、これが最後のある人物の行動に説得力を与え、事件解決に導くので
良しとしますか。

それにしても、あの人(女性)は大丈夫なんですかね?凡人には理解不能な行動というか、
ラストのこの暴走っぷりには目が点になりましたけど。。
それを諭すのは、吉敷さんであって欲しかったです。
ちょっと地味キャラですから今回の吉敷さん。


本作も続いてあまり(全く)評判やおすすめの声は聞きませんでしたが、
私、これが一番面白く読めたかも。。
問題点はありますが、駄作ではないはず。十分惹き込まれるストーリーです。

これで「one of them」、さすが巨匠、さすが大御所。