すべてが猫になる

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アトポス (ねこ5匹)

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講談社文庫。


ハリウッドに出没する、顔面が血まみれで頭髪のない怪人。次々と攫われる嬰児。
猟奇殺人の犯人は、果たして映画「サロメ」を撮影中の女優、松崎レオナなのかーー。
そして、レオナ含む撮影関係者一行は、撮影現場である死海でも
新たな惨劇に巻き込まれる。
吸血鬼は蘇ったのか!?


前半、中篇といえる吸血鬼エリザベート・バートリーの物語から語りましょう。
これがとにかく素晴らしい。オカルトのおいしい所を全て網羅し、
起承転結で纏まった一つの物語を完成させています。
発端、事件、窮地、脱出、平穏と、定番の展開がそろい踏みしていながらも、
パターンである事を意識させない読ませる力と、意外性と期待通りの展開のバランスの
巧みさがこの物語を新鮮で読み応えのあるものにしています。
これだけでほぼ満足したと言ってもいいですね。


さらに、現在進行形で発生する猟奇殺人。元々の準レギュラーキャラである
レオナを狂人という役どころにおくとは。凄い試みです。読者はこれで、
謎の真相が二重となるわけで楽しみどころが増えるわけです。


お待たせしました我らのミタライ登場の巻からは、もう何の不満があるわけもない。
はっきり言ってまたかよ島田さんも好きだなあ、というパターンが出来て来た気が
しなくもないですが、これがいいのですよ。つぼですよ。

トリックは相変わらずすさまじい。。
ここまで来たらもう奇想というより珍想ですよ。二度つっこみましたよ。
でも、楽しいのです。わくわくするのです。そもそも、この人の作品はのっけから
斜めに建ってるお屋敷だったんですから。(建つかいな^^;)←ミもフタもない


そして、このクライマックス。
私のハイライトは実はここでした。
愛する男女が抱き合うのも、哀しい別れに涙し歩き出すのもいいけれど、
御手洗さんにはこういうのが似合う。
そして、私の鬼門であったレオナ嬢にはお疲れ様という言葉を贈りたい。
私も一冊の本で大人になりました^^。