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十三番目の人格 ーISOLAー (ねこ4匹)

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角川ホラー文庫。第三回日本ホラー小説大賞長編賞佳作作品。


貴志さんの処女作です。

エンパスという能力を生かし、ボランティアで阪神大震災被災者のカウンセラーを
している由香里は、長期入院中の少女、森谷千尋に出会う。千尋は、体内に複数の人格を
同居させた多重人格障害であった。由香里は精を込めて千尋のカウンセリングに
あたるが、やがて十三番目の人格である「ISOLA」の出現で恐ろしい事態に巻き込まれーー。


私は貴志祐介という作家をひいきにしていますが、本作は現時点では最下位なのです。
はい、このレベルでです。つまりは他の作品が素晴らしすぎるからです。
佳作どまりであることにクレームをつけたくなるくらいです。

確かに、他作品に比べてストーリーや構成は落ちるかもしれません。
しかし、それは貴志氏作品との比較であって、他同賞の大賞作品と比べて
明らかにクオリティが違うと思うのですが。。


多重人格を扱ったホラーというのはありがちだし、展開と構成はやはりちょっと
新人作家ぽいというか、「ざっ」と書いたという感じ。
上げる。また落とす。という結末もよく使われる手法かも。

だけど貴志作品は登場人物の行動に説得力があって、心理に理屈があります。
それが出来ている新人作家のなんと少ないこと。

それで「物足りない」と言われるくらいだから、(もちろんその前には
「貴志氏にしては」という言葉がつく)いかに多くの人が「黒い家」や「青の炎」で
貴志氏の異才ぶりに気付き、期待をかけているかがわかります。


こういう作家が出て来ると、ホラーというジャンルの持つ枷が歯がゆいなあ。。