すべてが猫になる

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HEARTBEAT (ねこ3.8匹)

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小路幸也著。東京創元社ミステリ・フロンティア


優等生の委員長、裕理(ヒロマサ)と、不良少女ヤオ。
裕理は、ヤオが自力で自分の人生を立て直すことができたなら、十年後に
「ある物」を渡そう、という約束をした。
やがて十年が経ち、約束の通りに待ち合わせ場所に赴いた裕理。しかし彼女は
現れず、変わりにヤオの夫だという男がやって来た。その夫の語るには、
三年前からヤオは行方不明になっているという。


十年前と現在。ニューヨークと日本。静かに語られる青春ミステリーです。
複雑な家庭に育ったがゆえか、冷静で達観した価値観を持つ裕理が印象的。
裕理のニューヨークでの過去、ヤオの行方、二人の感情、裕理の母親など、
謎がたくさん存在し、ゆっくりと物語が進むにつれて解きほぐされて行きます。
曖昧に終わってしまった謎も一つありますが。

ミステリであることを忘れてしまうような雰囲気を持つ作品ですが、
ラストで二度驚かされます。斬新かどうかはわかりませんが、
「謎を解くぞ」「ここが伏線か?」という姿勢で読んでいなかったので
「うわっ、びっくりする話だったのか!」という驚き方をしてしまうのですね。

本来、大多数の人間がひいてしまうような真相(自分も含め)なのですが、
これは感動のあまりそれどころではありませんでした。その理由は、何と言っても
脇役である巡矢という人間の魅力ゆえでしょう。一番光っていたキャラでは
ないでしょうか。(主人公二人よりも)

愛情の究極の形を教わってしまった小説です。

ミステリとしては弱く、好みによっては退屈な印象を与える感のある物語ですが
癒されたい気分の時にぜひどうぞ~♪
新年一発目から幸先のいい読書のスタートを切りました。