すべてが猫になる

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任侠シネマ  (ねこ3.8匹)

今野敏著。中央公論新社

「永神のオジキは、映画館の話でいらしたんですか?」興味津々の若い衆に、阿岐本組代貸の日村は心の中で溜め息をつく。困った人をほっとけず、さらには文化事業が大好きなヤクザの親分・阿岐本雄蔵のもとには、一風変わった経営再建の話が次々と舞い込んでくる。 今度の舞台、潰れかけの映画館にも、もちろん山積みの問題が。TVやネットに押されて客足が遠のく厳しい業界事情もさることながら、存続を願う「ファンの会」へ嫌がらせをしている輩の存在が浮上し……。 ヤクザも生きにくい世の中で、街の小さな映画館をどう守る! ?(紹介文引用)
 
任侠シリーズ第5弾。
 
面白くて読みやすくて大好きなこのシリーズ、今回阿岐本組が立て直すのは映画館。映画は私も好きなほうなので嬉しい題材。私が子どもの頃は洋画全盛期で子どもも大人もみんな映画館に行ってたけど。正直私も家に本格的なシアタールームを作ったので映画館自体にはほとんど足を運ばなくなってしまった。経営が厳しい千住シネマは千住興業のお荷物なのか。どうして思い切った売却をしないのか。裏にヤクザが関わっているのか。などなどなど。
 
映画館に行ったことがない日村さんが高倉健の映画を観て完全に健さんにハマるのが面白かった。誰もが恐れる半グレに「ヤクザよりも怖い」と恐れられる稔とか(笑)。いつも喋らないテツがオヤジに言い返すシーンも良かったなー。よく殴られなかったもんだ。甘糟刑事も頼りない感じだったのにあんなふうに上司に逆らうなんて強くなったもんだ。
 
最後はあれよあれよという間に解決した感はあるけど、映画愛と任侠道を感じる楽しい作品だった。やっぱお金だけでは生きていけないよね。好きなものを心から楽しまないと。