すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

#真相をお話しします  (ねこ4匹)

結城真一郎著。新潮社。

私たちの日常に潜む小さな"歪み"、
あなたは見抜くことができるか。

家庭教師の派遣サービス業に従事する大学生が、とある家族の異変に気がついて……(「惨者面談」)。不妊に悩む夫婦がようやく授かった我が子。しかしそこへ「あなたの精子提供によって生まれた子供です」と名乗る別の〈娘〉が現れたことから予想外の真実が明らかになる(「パンドラ」)。子供が4人しかいない島で、僕らはiPhoneを手に入れ「ゆーちゅーばー」になることにした。でも、ある事件を境に島のひとびとがやけによそよそしくなっていって……(「#拡散希望」)など、昨年「#拡散希望」が第74回日本推理作家協会賞を受賞。そして今年、第22回本格ミステリ大賞にノミネートされるなど、いま話題沸騰中の著者による、現代日本の〈いま〉とミステリの技巧が見事に融合した珠玉の5篇を収録。(紹介文引用)
 
初めましての作家さん。ちょっと前から話題になっていて見送っていたのだけど、今年のランキングにちょこちょこ入っていたのでやはり読むことに。なかなか楽しめた。
 
「惨者面談」
家庭教師業者で営業のアルバイトをする大学生が、訪問した家庭で様々な違和感を抱く。母親の外さない手袋、使えないトイレ、割れた花瓶などから恐ろしい真相を暴く。怒涛の伏線回収からのどんでん返しが効いてる。
 
「ヤリモク」
42歳の妻子持ちの男がマッチングアプリで出会った若い女。簡単に<お持ち帰り>できたことに疑問を感じた男は。。。これは簡単に真相が見破れるタイプのものだが、タイトルの真の意味や動機の狂った感じなど読みどころが多かった。
 
「パンドラ」
不妊の末娘を授かった男は、同じような夫婦の役に立てばと精子提供に登録したが、会うことになった希望者の女性の様子がどうもおかしい。連続殺人犯の冤罪問題が出てくるのである真相を想像していたが外れた。このお話だけは明かされる何か、が小さいような。心理的に謎な話なのでちょっと浮いていたかも。
 
「三角奸計」
大学時代の友人3人でリモート飲み会を開催。しかしそのうちの1人が「あいつを絶対に殺す」とチャットで発言する。仙台と大阪という距離や声を出せないという条件をうまくトリックとして使っていたと思う。リアリティは別として、ここまでいくと怖い。
 
「#拡散希望
離島で暮らす小学生4人グループ。ある日そのうちの1人がスマホを持ち始めたことで彼らに「ゆーちゅーばーになりたい」という夢が芽生え始めた。これは全く想像できなかった、本当にこういうユーチューバーがいそうなのが怖い。
 
以上。
「惨者面談」「#拡散希望」がやはりズバ抜けてたかな。文章は読みやすいし、サクサクと話が転がるのも今の作家さんぽくていい。テーマも現代を象徴したものが多く、共感を得やすいんじゃないかな。どれも過激な内容ではあるが、きちんと論理立って話がまとまるのでミステリーファンにも受けがいいと思う。またこういう作品が出たら読んでみたい。