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少年検閲官  (ねこ3.8匹)

北山猛邦著。創元推理文庫

旅を続ける英国人少年クリスは、小さな町で家々の扉や壁に赤い十字架のような印が残されている不可解な事件に遭遇する。奇怪な首なし屍体の目撃情報も飛び交う中、クリスはミステリを検閲するために育てられた少年エノに出会うが…。書物が駆逐される世界の中で繰り広げられる、少年たちの探偵物語本格ミステリの未来を担う気鋭の著者の野心作、「少年検閲官」連作第一の事件。(裏表紙引用)
 
先日発売された「オルゴーリェンヌ」を読もうと思ったら続編だと分かったので第一弾のこちらから。そんなにそそられない作品だったので読みこぼしてたのだけども、意外と好みの世界観だったし思っていたよりずっと面白かったかなー。
 
書物の所持が禁止され、検閲によるラジオ放送だけが情報源の世界。暴力は排除され、一見平和な時代に見えた。イギリス人の少年クリスは、一人旅の途中たどり着いた日本の土地で赤い十字架の印や首なし殺人などの不可解な事件を知る。日本の宿屋で謎を考察しながら過ごすうち、検閲官の少年エノと出会うが…。
 
エノの登場が遅くてヤキモキするものの、概ねキャラクターは全員個性的で魅力あるふうに描かれていると思う。北山さんお得意のメルヘン世界に合っているし(イラストの魅力が大きいのもあるが)。ちょっと気取った、だけど少年くささと現実離れした感じは異国情緒を漂わせるし(設定はなぜか日本だが、言われないと分からないくらい英国風味)。不可能犯罪、奇想天外な事件を描かせたら右に出る者はいないほどの作家だと思うが、肝心のトリックまでもが非現実的でありえなくて…みたいなところもまんま安定の北山ワールドだった。その動機や狂人のこだわりは自分の趣味に合っていたので許容範囲。またクリスとエノのコンビが読みたい。続編が楽しみだ。