すべてが猫になる

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彼女が最後に見たものは  (ねこ4匹)

まさきとしか著。小学館文庫。

クリスマスイブの夜、新宿区の空きビルの一階で女性の遺体が発見された。五十代と思われる女性の着衣は乱れ、身元は不明。警視庁捜査一課の三ツ矢秀平と戸塚警察署の田所岳斗は再びコンビを組み、捜査に当たる。 そして、女性の指紋が、千葉県で男性が刺殺された未解決事件の現場で採取された指紋と一致。名前は松波郁子、ホームレスだったことが判明する。 予想外の接点で繋がる二つの不可解な事件の真相とは――!?(裏表紙引用)
 
「あの日、君は何をした」続編。
事件を捜査する三ツ矢刑事&田所刑事のコンビが続投ということで、事件そのものは繋がっていないのでここから読んでも問題はないかと(三ツ矢の過去などが記述されるので順番通りに読む方がいいが。どっちやねん。)
 
新宿で、ビルから突き落とされたと思われるホームレスの女性の遺体が発見された。その女性の指紋が、千葉県で刺殺された男性から採取したものと一致。2つの事件はどこでどう交差するのか。
 
くも膜下出血で死亡した直後トラックに轢かれたホームレス女性(松波郁子)の夫、そして更年期障害が重く働けなくなった郁子に行政は冷たかった。郁子を担当した市役所員の態度も相当ひどいが、その妻の境遇も輪をかけてひどい。インスタでの虚構などは夫に原因があろうし、交通事故を起こし家庭が崩壊した井沢の妻の夫への罵詈雑言、理不尽な仕打ちだって全面的に彼女の言い分がおかしいとも思わない。諸悪の根源がどこにあるのか、他人が他人へ与える影響はどこまで自己責任なのか、色々と身につまされるものがある。おかしな言動をするなあと思わせる人物はやはりキーマンとなるので分かりやすいと言えば分かりやすいが、郁子が辿った人生やその意外な人柄、真犯人の動機、郁子と思いもよらない人びととの交流などはかなり意外性に富んでおり、最後は思いもかけぬ感動を生んだ。端から見れば哀れで悲しい人生、だけど彼女は本当に不幸だったのだろうか、読者に強く問いかけてくる力作。
 
まさきさん3冊目だがハズレがない、特にこのシリーズは強い。読破したい。