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相田家のグッドバイ  (ねこ3.6匹)

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森博嗣著。幻冬舎文庫

紀彦にとって相田家はごく普通の家庭だったが、両親は変わっていた。母は整理収納に異常な情熱を傾け、孤独を愛す建築家の父はそんな母に感心していた。紀彦も結婚し子供ができる。やがて母が癌で亡くなり、看取りのあと父も自ら入った施設で亡くなる。家のあちこちに母が隠したヘソクリが出現し……。限りなく私小説の姿を纏う告白の森ミステリィ。(裏表紙引用)
 
森作品にしては珍しく、会話文や詩的文章もなく改行も少ない小説。神視点=相田家視点で、相田家の父親、母親、主人公の立場での長い人生が語られる。相田家はかなり両親が変わっていて、特に母親の「モノを捨てられない」癖は地獄。整理魔だからまだマシか。愛情がないわけでもないけれど、成人したら家族に依存してはいけない、みたいな。それも教育として、って感じでもないのよね。性格というか。それはともかく、後半は主人公視点の父親の介護の様子が延々と綴られるのがキツかった。リアルというか、身につまされるというか。主人公、偉いよなあ。妻がよく耐えたと思うわ。ラストがちょっと夢物語ふうになってついていけなくなったが、この独特の家族風景は読む価値あり。