すべてが猫になる

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殺人犯 対 殺人鬼  (ねこ4.2匹)

早坂吝著。光文社文庫

ここは孤島にある児童養護施設。嵐で船が出せず職員が戻れなくなっている。島には子供だけ。この好機に僕、網走一人は彼女を自殺未遂に追い込んだ奴等の殺人計画を実行することにした。まずは剛竜寺だ。――何故もう殺されている? 抉られた片目に金柑のはまった死体。僕より先にこんな風に殺したのは誰だ! 戦慄の連続殺人の真相を見破れるか!(裏表紙引用)
 
早坂さんのノンシリーズ文庫新刊。こんな作品があったことを忘れていた。タイトルからして早坂さんぽいちょっとぶっ飛んだノリ。舞台は孤島の児童養護施設で、語り手の網走がいじめっ子のボスを殺そうと企むも先に誰かに殺されていた、という突飛な出だし。よって好感の持てる主人公ではないのだが、その動機が同情を誘う。しかし、意味のなさそうな文章に強調点が付けられていたり(伏線なのはわかるが)、二重人格、探偵、筋トレ女子など色々とキャラの立った人物が出てきたりとなんとなく誰も信頼できない。語り手さえも。挿入される「X」の過去は現在の誰を指すのか。ラストは期待していた通りのどんでん返しと読者騙しが明らかになってスッキリ。奇抜ゆえに好き嫌いは分かれそうかな。私はこういう猟奇的で遊びに走った動機って嫌いじゃない。登場人物の年齢層が低いからこそ成立する世界観かも。面白かった。